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2001年の農業所得、畜産部門は好調(米)


【ワシントン駐在員 樋口 英俊 10月25日発】米農務省(USDA)は先ごろ、
2001年の農業所得見通しを発表した。これによれば、2001年の純農業現金所得は前
年比5.7%増の608億ドル(約7兆2,960億円:1ドル=120円)、純農業所得は同6.5
%増の494億ドル(5兆9,280億円)と見込まれている。

 統計上、いわゆる農業生産者は、1,000ドル以上の年間農業生産高を有する者と
定義されており、さらに農業粗販売額や農業への従事度などにより、農村居住農家
(Rural Residence Farm)、中規模農家(Intermediate Farm)、大規模農家
(Commercial Farm)に区分される。

 農業生産者数では4割弱、農業生産高では約9割を占める中規模及び大規模農家の
部門別1農家当たり純農業現金所得を見ると、トウモロコシについては前年比21.6
%減、大豆が同16.3%減、タバコ・綿花・ピーナッツが同42.8%減と見込まれる一
方で、畜産部門については、市況の好調さなどを反映して、肉牛が同12.0%増、肉
豚が同10.1%増、酪農が同54.0%増、家きんが同23.2%増と、軒並み2ケタの伸び
が予想されている。作物類の所得減については、政府からの補助金収入の減少のほ
か、肥料の値上がりなどが要因とされる。

 2001年の政府による農家への直接補助金については、緊急農家支援策や環境保全
関係の支払が増加するものの、農家直接固定支払単価の引き下げや、市況の回復に
よるローン不足払い(LDP)の減少により、前年比12.6%の減少が見込まれてい
る。なお、2000年における政府補助金の粗現金所得に占める割合は全生産者では15
%、部門別では、穀物及び大豆24%、綿花17%、肉牛10%、肉豚9%、酪農5%な
どとなっている。ちなみに、政府の直接補助金は、農地価格値上がりの要因の1つ
とされており、USDAは、99年から2001年の間では、政府の補助金がなければ、
農地価格は実際の価格より25%安くなっていたと試算している。

 コストの面では、昨年来大きな問題となっているエネルギーコストの増加が肥料
の値段にも反映されてきており、例えば、2001年におけるトウモロコシの1エーカ
ー当たりの肥料コストは、前年を28.0%上回るものと見込まれている。窒素系の肥
料に利用される無水アンモニアは、天然ガスが製造コストの大部分を占めており、
エネルギーコストの増加の影響が顕著である。

 トウモロコシや小麦では、エネルギー関連コストの比率が経営コストの4割を超
えるが、窒素系の肥料をほとんど使用しない大豆では、2割程度と見込まれている。
このため、USDAは、エネルギー関連コストの増加が、今年の大豆作付け拡大の一要
因と見ている。

 一方、2001年における農家の農業による負債の総額は、前年を約1%上回ること
が見込まれている。これが現実となった場合、9年連続で負債が拡大することにな
るものの、伸び率自体は、97年の6%から比べると落ち着いたものとなってきてい
る。銀行の融資については、緊急農家支援策などの政府補助金が、その決定に影響
を与えていると指摘されている。


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