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豪州連邦政府、国際家畜資源情報センターを設置


【シドニー 幸田 太 8月30日発】豪州連邦政府は8月23日、すべての家畜品
種を対象に新たな研究、品種改良および情報提供を目的とし、5年間にわたり総
額450万豪ドル(約2億9,250万円:1豪ドル=65円)を投じて、ニューサウスウェ
ールズ州のニューイングランド(UNE)大学内にInternational Livestock Reso
urce and Information Center(国際家畜資源情報センター:ILRIC)を設置すると
公表した。

 このプロジェクトは産業科学資源省の指導監督の下、総額30億豪ドル(1,950
億円)のBacking Australia's Ability(豪州開発支援計画)といわれる15の基
礎研究および研究者育成のためのプログラムのうち1億5,500万豪ドル(約100億
円)を投じるMajor National Research Facilities Program(主要国立研究施設
支援計画)の中のひとつとして位置づけられ実施されることとなる。

ILRICの設立目的は、
@ 現行の研究機関や畜産団体とUNEとの研究協力体制の確立
A 家畜の膨大なデータを蓄積するための高性能コンピュータの導入とソフトウ
 ェアの開発
B 畜産業界における生産性向上のための研究の強化
C ILRICを活用して豪州の畜産関係企業にインターネットを通じて企業活動に
 おける意思決定に必要な情報を提供する

となっており、重要な情報をすばやく提供する研究所を目指している。

また、これら研究開発の内容としては、
@ すべての畜種に適用される遺伝子評価方法の開発
A 能力、有効性、形態などの特性に係る遺伝子マーカーの発見
B 世界中のデータベースを利用した優秀な遺伝子の識別
C 家畜管理システムの開発
D 家畜データを収集、蓄積および提供するためのインターネットシステムの開
 発、となっている。

 今回、ILRICを設置することになるUNEは、すでに90年から畜産部門における肉
牛および肉質に関する官民共同研究プログラムの運営母体として研究開発を行っ
ている。主な研究開発内容としては、高品質な牛肉の遺伝子研究、熱帯品種によ
る交雑種造成の研究、インターネットを利用した研究開発情報の公開、家畜資源
管理システムの作成、ワクチン接種、公開講座の開催などである。さらにUNEに
は、AWA(豪州和牛登録協会)も事務局を置くなど、家畜の遺伝、飼養管理の分
野においては豪州で先駆的な研究を行っている。

 現在、このプロジェクトは、予算額および目的などが公表された段階で、向こ
う5年間でどれだけ実際の成果が現れるか未知数であるが、プロジェクトが成功
すれば豪州の家畜の一大データベースシステムが構築されることとなる。さらに
ITを駆使して、プロジェクト自体が加速してゆくことは間違いない、今後の展
開に注目したい。


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