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【ワシントン 樋口 英俊 8月29日発】米農務省(USDA)の発表によれば、米 国の2001年度(2000年10月1日〜翌年9月末)における農産物の輸出額は、2001年 6月までの9カ月間の累計で、前年同期比5%増の407億ドル(約4兆8,840億円:1ド ル=120円)となった。こうした動きは、いわゆる高価額製品(HVPs)の輸出増に よるもので、特に皮革類(前年同期比4億ドル(約480億円)増)、飼料(同2億8 千万ドル(約336億円)増)、果実および果汁(同1億7,700万ドル(約212億円)増) で高い伸びを示した。 一方、同期間の輸入については、コーヒー価格の値下がりなどから前年同期比 1%減の296億ドル(約3兆5,520億円)となった。この結果、同期間の農産物の貿易 黒字額は、前年同期を22億ドル(約2,640億円)上回る111億ドル(約1兆3,320億 円)に達した。ベネマン農務長官は、米国の農業生産者にとって、貿易は極めて 重要であり、さらに拡大させていくためには、貿易交渉を進め、新たな市場開放 を実現していくことが必要とコメントした。なお、USDAによれば、米国の農産物 輸出額は過去15年間において、農業生産者の現金収入の18%程度であったものが、 現在では約30%にまで増加している。 8月初め、米上院農業委員会の生産および価格競争力に関する小委員会におい て、シャープレスUSDA海外農業局次長は、米国の農産物輸出の現状について証言 したが、その中でUSDAの懸念についても言及した。それによれば、米国は20年前、 国際農産物貿易市場において、まさに世界の輸出国のリーダーであり、そのシェ アは24%に達していた。しかし、現在では18%にまで低下すると同時に、米国の ライバルであるEUとの差が縮小し、EUに追い越される寸前まできているとした。 また、6ポイントの減少といっても、1ポイントの減少で、7億5千万ドル(約900 億円)の農業所得の減少に相当することから、見過ごすことのできる値ではない としている。 同局次長は、米国が輸出市場におけるシェアを増加させるために必要な事項と して、(多国間)貿易システムの大幅な改善、米国の輸出関連制度の見直し、国 際市場に焦点を絞ったマーケティング戦略の遂行を挙げた。また、小委員会の議 員に対して、次期農業法の議論との関連で、世界貿易機関(WTO)の協定上問題 のない輸出市場の開発に関する制度への取り組みを求めた。また、国内政策が米 国農産物の競争力を妨げては、輸出政策に取り組む意義が失われるとして、国内 外の政策の一貫性とWTOのルールに基づく措置の必要性を訴えた。 こうした中、貿易促進権限(TPA:過去にファスト・トラック権限と呼ばれて いたもの)の早期承認を議会に働きかけているベネマン長官に援軍が現れた。前 任のグリックマン氏から、古くは約40年前に農務長官を務めたフリーマン氏に至 るまで、過去の農務長官10名が8月27日、連名でTPAへの支持を明らかにするとと もに、議会に対してその承認を求めた。力強い応援を得たベネマン長官は、米国 が、自由貿易協定の締結で他の輸出国に比べて大幅に出遅れていることに危機感 を示すとともに、TPAの承認が米国の農業にとって、新たな機会を創出する上で 不可欠との認識を改めて強調した。
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