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【ブラッセル 山田 理 9月13日発】イギリス酪農振興委員会(MDC)は先般、 生乳・乳製品の価格や需給動向などの新たな生乳取引情報提供サービスを開始した。 情報の内容は、イギリスにおける乳業会社ごとの生乳買入価格、農家から乳業会社 への生乳出荷量、主要乳製品の卸売価格といった生乳取引情報に加え、搾乳牛の飼養 頭数などの基礎的統計、さらにはEUにおける生乳・乳製品の価格および生産動向ま で、酪農家などのニーズに即し幅広く網羅される予定である。こうした情報は政府機 関や民間のコンサルタント・専門家から収集され、独自の分析を加えた上で、インタ ーネット(www.mdcdatum.org.uk)上に公表される。また、隔週刊行のニュースレタ ーはファックスやEメールを通じても入手できる。 MDCはミルクマーケティングボード(MMB)の廃止に伴いMMBの業務の一部 を継承し、95年2月に設立された非政府公益組織(Non-Departmental Public Body) である。MDCは酪農に関する技術・経営両面からの研究開発を行い、その結果を酪 農家へ伝達することで、グレートブリテンの酪農家の技術力と競争力の確保を推進し ている。また、最近では、乳業界と連携した牛乳消費拡大事業も行っている。組織運 営資金はグレートブリテンの全酪農家から徴収される法定課徴金(生乳1リットル当 たり0.06ペンス:約0.1円、1ポンド=100ペンス=175円)によって 賄われ、年間の 課徴金収入は、約8百万ポンド(約14億円)に上る。なお、政府による経費負担は行 われていない。 イギリスでは、酪農・乳業界の効率化を図るための規制緩和が進められ、一元的に 生乳を集荷・販売していたMMBが94〜95年にかけて廃止された。これに伴い、生乳 の集荷・販売の独占権を持たない5つの後継組織が設立され、大半の旧MMB会員を 獲得したものの、生乳取引の自由化は取引形態の大きな変化をもたらした。2000年に は、MMBの後継組織の中で最大の生乳集荷量を誇っていたミルクマークが、大規模 な独占状態を利用して価格操作を行い、生乳の供給を不当に管理していると非難され、 3つに分割されることを余儀なくされた。さらに、MMBの後継組織を通さない酪農 家・酪農家グループと乳業会社の直接取引も徐々に増加しており、一部に酪農家側の 価格交渉力の低下を懸念する向きもある。 一方、イギリスの乳業界では、世界的な傾向と同様に乳業会社の合併・買収による 合理化・巨大化が急速に進んでおり、公正な取引環境を維持する上で、公益組織によ る市場情報提供の必要性が指摘されていた。 今回のMDCによる新たな生乳取引情報 の提供は、酪農家の交渉力を補完するだけでなく、生乳の価格形成における透明性の 向上につながるものと期待されている。
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