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【シドニー 幸田 太 9月20日発】ニュージーランド(NZ)最大の酪農組合 であるフォンテラ(正式発足10月1日、新名称決定8月27日:旧グローバル・デ イリー・カンパニー)は、9月14日、NZ政府が検討している遺伝子組み替え (GM)技術の利用についての規制緩和を行わなければ、研究部門の海外移転も 検討するとの強い姿勢を示している。NZでは、GM技術について、政府と産業 界で今後も議論が展開される模様である。 フォンテラが同社ウエッブサイトに掲載したメディアリリースでは、NZ政府 が10月末発表予定のGM問題についての報告書に、GM技術の国内での長期的な 研究禁止が盛り込まれると示唆したことに反論する内容となっている。 今回のGM問題をめぐる背景は、今年7月末に公表された、 The Royal Commission(NZ王立委員会)のGM研究等に対する答申にある。同 委員会は、NZのGM問題について現在、将来に渡ったあり方の基本答申を作成 することを目的として、昨年4月にNZ政府により組織された初のGM問題諮問 機関であり、4名の委員で構成され、予算額620万NZドル(1NZドル=50円: 約3億1千万円)となっている。この答申は、1年以上の歳月を費やし、延べ1 万人以上が意見を陳述し、330人の専門家からの助言を受け検討・作成された。 答申では、NZの産業にとって国際競争力を高めるにはGM技術の利用が必要 不可欠であり、現行の管理体制を強化する前提(GM問題に対応する独立組織の 設置)でその導入を支持するとしている。 NZでは、7月末に同委員会の答申が発表されて以来、オーガニック生産者お よび環境団体からは、同委員会のGM技術の利用を支持している答申に反発が起 きている。その一方で、農業団体、牛肉・ラム肉業界、ウール業界、食品および 医薬品業界からはGM技術研究の発展に期待が寄せられている。 NZ政府は、この答申を受けて今年10月末までに、法律に基づく報告を行うこ ととなっている。 この報告書で、政府がGM技術の研究開発に対する規制を強化する方向を打ち 出すものとの観測がされている。 問題のひとつには、現在、すべてのGM調査研究がこの報告が発表されるまで、 中止されていることであり、その影響を受けるのは、農業ばかりではなく、医療、 食品等の産業と幅が広い。 フォンテラは、世界でも第9位の乳業会社であり、先日も米国の企業とのジョ イントベンチャーが発表され、また豪州の大手乳業会社とも資本関係を結ぶなど、 世界が活動の舞台となっている。フォンテラにとってGM技術を駆使した乳牛、 乳質、製品に関する研究は、世界を相手に競争してゆくには、将来的に必要不可 欠とされている。 NZの農業は、その豊かな自然条件を巧みに利用し、低コスト生産を行ってき た。しかし、乳製品のみならず、生産品のほとんどを輸出に依存しており、世界 各国がその競争相手となる。GM問題は、将来、競争相手に勝つための有用な手 段のひとつと考えられ、今後の政府の判断が注目されている。
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