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米農務省、将来の食料・農業政策の諸原則を提言


【ワシントン 渡辺 裕一郎 9月20日発】米農務省(USDA)は9月19日、将
来食料・農業政策に関する政府としての諸原則(principles)を公表した。これは、
「新世紀に向けた現状の考察」という副題が付された約120ページに及ぶレポートに
よるもので、次期農業法の制定に向けた議論のたたき台という性格も有する。

 現行の96年農業法の有効期間は1年あまり残されているが、米国経済の減速によ
り財源確保が困難なことに加え、来年が中間選挙の年に当たることもあり、早くも
今年7月には下院農業委員会で次期農業法案が可決されるなど、議会の先行した動き
が目立っていた。今回のUSDAの基本方針は、議会に対し何ら拘束力を持つもの
ではなく、内容的にも、次期農業法に盛り込むべき具体的な政策の提示といった直
截的な記述は見られないが、現行政策の問題点や、これを踏まえた将来のあるべき
政策の方向が、データ的な裏付けとともに示されており、今後の議会審議を大きく
左右することも想定される。

 政策の種類別に全体で7つのパートからなる基本方針に通底するのは、米国にお
ける食料・農業をめぐる情勢が「洗練された消費者(ニーズ)によって主導され、
グローバル化し、技術的に進化し、急速に多様化し、競争が激化している」(ベネ
マン農務長官)という現状認識であり、また、これに対処するための政策は、市場
志向型で、財政効率が良く、世界貿易機関(WTO)協定にも整合的でなければな
らないという理念である。

 その特徴的な内容は以下のとおりである(他の項目としては、「農村地域政策」、
「栄養・食料援助政策」、「政策統合」が挙げられている)。

@「貿易の拡大」:市場アクセス拡大には、関税引き下げと貿易わい曲的な補助金
  の撤廃が必要。競争力確保のため、国内の農家支持政策と国際的な貿易政策とが
  完全に調和し、これらは現行国際約束にも適合する必要がある。

A「農家政策」:規模、地域、作目、財政事情などの面で多様化する農家の実態や
  ニーズを反映した政策が講じられるべき(背景には、直接支払いの交付額が少数
  の大規模経営体に偏っているという問題)。予期せぬ収入減などに対処するため
  のセーフティ・ネットは、市場指向型の、経済的で、透明性のある、公平なもの
  とすべき。
  
B「インフラ政策」:動植物検疫、食品衛生、環境保全といった、フード・チェー
  ン全体のサービス、施設・設備、組織についての、今日的役割に応じた整備が必要。
  
C「環境保全政策」:費用対効果の高い、柔軟で広範な政策を講じるとともに、生産
  拡大政策との調和が必要(WTO協定上の「緑」の政策でもあるべき)。
  
 9月20日に予定されていた上院農業委員会においては、主要作物に対する不足払い
制度の復活を含む下院の農業法案に対し、証言に立つ農務長官がどのような評価を示
すのかが注目されていたが、9月11日の米国内における同時多発テロの影響で、翌週
以降に延期となった。しかし、今回のUSDAのレポートによれば、WTO協定上の
助成合計量(AMS)の約束水準を突破するおそれも示唆されており、消極的な反応
も予想される。なお、テロ関連では、復興や経済対策などに必要な緊急的な財政支出
も予定されており、次期農業法をめぐっては、財政的にもさらに大きな制約が課され
ることは避けられない状況となっている。




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