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【ブラッセル 島森 宏夫 4月11日発】EU科学運営委員会(SSC)は4月5 日、小型反すう動物(羊・ヤギ)での牛海綿状脳症(BSE)罹患の可能性に関す る2つの提言を採択した。この中で、@本年4月から強化されたスクレイピー検査 で陽性を示す個体に対するBSE罹患の有無の確認検査方法について提案する一方、 A現状では必要性は認められないものの、万が一、羊・ヤギでBSEが確認された 場合には、安全対策の見直しが必要との見解を示した。各提言の抜粋は次のとおり である。 1 BSE検査方針 EU内の羊のBSE検査を次の3段階で行うことを提案する。 (第1段階) a)伝達性海綿状脳症(TSE)の発生状況を調べるため、健康な動物のと畜時に、 統計的な代表サンプルに対し、脳の迅速検査を実施する。 b)死亡家畜や疾病により緊急と畜された家畜に対し、迅速検査を実施し、臨床例 としての検体を提供する。 c)スクレイピーと通報された動物から擬似臨床的患畜を特定し、臨床例としての 検体を提供する。 (第2段階) 第1段階で陽性となったすべての検体について、病原体(プリオン)株の分子的 タイピングを2種類以上実施する。(なお、1種類の分子的タイピング実施では、 BSEの可能性が存在するか、排除できるかの判定はできない。) (第3段階) 第2段階でBSEの可能性があるとの結果が得られた場合、さらにマウスを使っ た病原体株のタイピングを実施する。 2 羊・ヤギから得られる部位の安全な調達 @実験的BSE感染動物の感染性部位 実験的にBSEに感染させた羊の感染性部位は、牛と異なり、広範囲である。現 時点の知見で、感染(伝達)性があるまたはその可能性がある部位は以下のとおり である。 頭部、脊髄および関連背側神経節、脾臓、末梢神経組織、へん頭などその他リン パ組織・リンパ節、肝臓、すい臓、胎盤、食道から直腸までの消化管(関係する神 経およびリンパ節を含む) AスクレイピーおよびBSEに抵抗性または感受性のある小型反すう動物の遺伝 子型 羊においてのスクレイピーおよびBSEの感受性はプリオンタンパクの遺伝子型 と関連がある。これまでの知見では、コドン171でアルギニンにホモを持つ羊が最 も抵抗性がある。ヤギについての情報は限られるため、すべてのヤギで、一定の条 件で経口的にBSE病原体を投与されれば感染するものと推定するのが妥当である。 BBSEに感染した小型反すう動物を特定するための迅速検査 現在利用されていると畜後の牛のBSE検査法は、もし羊の中枢神経組織に適用 できるならば、BSE感染羊の特定に役立つだろう。しかしながら、小型反すう動 物では、BSEの感染性は潜伏期の初期から末梢組織で認められるため、BSE検 査により、牛と同等の安全性を確保することは困難だろう。 C羊・ヤギから得られる部位の安全な調達 万が一、羊・ヤギでBSEが確認された場合には、一定の年齢以上の動物での危険 性のある部位の除去に加え、BSEに抵抗性ある遺伝子型の検査・育種、群の清浄 性証明、個体および群の追跡などの異なった対策を組み合わせて対応する必要があ る。さらに、感染の危険の可能性がある部位は、飼料給与の実態、BSE感染動物 の輸入、監視体制の信頼性など地理的条件に応じて、変化するものと考えられる。
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