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ナショナルフーズ、乳価団体交渉に異議(豪州)


【シドニー 幸田 太 4月11日発】豪州の大手乳業会社ナショナルフーズは、生
乳買取価格の団体交渉権の認可を行った豪州自由競争消費者委員会(ACCC:独
占監視機関)を相手として、連邦裁判所の一部である豪州自由競争審判所(ACT:
Australian Competition Tribunal)に提訴した。ナショナルフーズは年間売り上
げ約10億豪ドル(約700億円:1豪ドル=70円)の豪州では最大手の乳業、食品会
社である。

 今年3月、ACCCは酪農乳業改革の影響が大きいとして生乳買取価格の交渉権
を認めたばかりであり生産者の動揺は広がっている。

 ACTは、1965年に商業法(Trade Practices Act:TPA)に基づき設立された。
連邦裁判所の裁判官によって指揮され、他のメンバーは各産業、貿易、経済学、法
律の知識を有する専門家から構成される。

 豪州では、商業法により販売側の団体交渉権が一部例外を除いて厳しく制限され
ている。しかし、ACCCは3月13日、酪農生産者に乳業メーカーとの団体交渉権
を正式に認可することを決定した。2000年7月に飲用乳の価格支持撤廃などの酪農
乳業改革を発表した後、影響の著しい生乳価格に対し、2005年7月1日までの期限
付きながら、酪農生産者はメーカーとの生乳供給契約の際、価格などの条件につい
て団体で交渉することができることとなった。これにより、酪農生産者自らが、よ
り良い価格での生乳販売を行える相手先も選択することが可能となった。

 今回のナショナルフーズの動きに対してニューサウスウエールズの酪農委員会議
長のロバート氏は、ACCCの認可どおりに正当な価格交渉の準備を進めていたグ
ループもあったが、裁判の終了まで来シーズン向けの生乳価格交渉は、実質的に長
引くことになり、酪農生産者の価格交渉力を弱めることになるとナショナルフーズ
に対して不快感を表明している。

 また、豪州酪農連盟のマックイーン理事は、団体交渉権を守るために10万豪ドル
(約700万円)の裁判費用が必要とされ、資金の不足も懸念している。

 最近のナショナルフーズの動きは、今年1月に豪州の老舗チーズ製造会社の一つ
であるキングアイランドチーズを買収した。その目的は、それまで自社では行って
いなかったチーズ及びクリーム事業の強化のためとされる。また、今年2月にニュ
ーサウスウエールズ(NSW)州北部飲乳市場のシェア拡大を目指し、NSW州と
クイーンズランド (QLD)州、州境の地域で、約30戸の酪農家を競合他社から
を引抜いて同地域で自社独自の供給基盤の確保を進めている。一方、海外でも、ニ
ュージーランドでのデザート製品の販売会社設立、中国でのヨープレイトとの販売
ライセンスの取得など積極的な展開を行っている。

 これは、ナショナルフーズの豪州国内はもちろんのこと、海外へも事業展開を積
極的に推進する姿勢の現れと思われる。

 一方、今月に入り小売最大手ウルワースを中心とした飲用乳販売も積極的に伸ば
す計画も発表されており、今後ウルワースとの飲用牛乳販売契約も控え、その注目
を集めている。

 今回の提訴は、ナショナルフーズとして海外での事業展開、国内での直前に迫っ
ている大手スーパーとの飲用乳販売契約などを踏まえ、生乳価格交渉などによる今
以上のコストの上昇は、避けたい思惑が現れたものと考えられる。今後の動きに注
目したい。


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