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【ワシントン 樋口 英俊 4月11日発】米農務省(USDA)は先ごろ、昨年1月に 官報公示された大規模畜産経営体(CAFO)に対する環境対策関係規則改正案の 実施による影響を分析した報告書を発表した。この規則改正案は、水質保全を目的 として、米環境保護庁(EPA)が提案したもので、その主な内容は次のとおりと なっている。 1.CAFOの定義の変更 現行の定義では1,000家畜単位(55ポンド以上の豚2,500頭、肥育牛1,000頭、乳 用成牛700頭、採卵鶏およびブロイラー10万羽(施設等により異なる場合あり)な どに相当)以上と規定されているが、これを最も厳しいオプションで300家畜単位 以上に引き下げる。なお、USDAによれば、このオプションで全国の畜産経営体の上 位20%、家畜ふん尿の70%が規制下に置かれることになる。 2.栄養分管理計画(NMP)の作成と実行 各CAFOは、家畜ふん尿の施肥量を作物の要求量以下に制限する栄養分管理計画 (NMP)を作成し、これを実行することが義務付けられる。なお、これに伴い各 自の農地で処理できない余剰家畜ふん尿は、商用肥料の代替あるいは補完用として 利用する意志のある他の作物経営体などへ供給することを余儀なくされる。 USDAはEPAの試算を引用し、NMPに伴う主要なコストとして、NMPの 作成・管理に係るものが1経営体当たり1,300ドル、家畜ふん尿の運搬に係るもの が施肥可能な土地への距離によってトン当たり0.007ドルから0.14ドル、などと見 込んでいる。 USDAの試算は、CAFOの定義を300家畜単位以上とするオプションが採用 されたとの仮定で、家畜ふん尿の他の経営体による受け入れに関するシナリオを3 種類(@作物生産者が当該地域における作物の必要栄養量の40%に相当する部分に ついて、家畜ふん尿を受け入れる、A同30%、B20%)想定し、計量モデルを利用 して行われた。なお、USDAは、家畜ふん尿の受け入れについて、90年代の後半 にトウモロコシと大豆を栽培する土地の9〜17%にしか家畜ふん尿が使用されなか った状況から、実際のところ難しいのではないかとの見方も示している。 @の受け入れ率の高いシナリオでは、生産への影響は、南東部を除く各地域での 家畜単位の減少率が1%未満となるなど、極めて限定的なものと試算された。Aの (同)中程度のシナリオでは、南東部で家畜単位が14%と減少となった一方で、北 東部およびデルタ地域でわずかな増加となった。Bの(同)低いシナリオでは、南 東部、アパラチア、山岳部で19〜30%の減少となった一方で、コーンベルト、北平 原地域などでは5〜11%の増加となり、NMPの実施が家畜ふん尿施肥の可能な地域へ CAFOの移動を促進する影響をもたらすことが示唆された。 USDAは、当該規則案の導入により、家畜単位は減少するものの、供給減で価格は 上昇し、一方で、飼料穀物への需要減によって飼料穀物価格が下落することから、 全体としては、NMPに関するコスト増加が十分相殺され、純収益は@のシナリオで 0.5%、Bのシナリオで16%増加するという楽観的な見込みを示した。 同改正案は、昨年7月に締め切られたパブリックコメントなどを検討中であり、 今年12月には最終規則として決定され、来年1月には公布される予定となっている。
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