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輸出税をめぐる関係業界の動きと直近の経済情勢(亜)


【ブエノスアイレス 犬塚 明伸 4月23日発】アルゼンチン経済省は大幅な税収
不足をカバーするため、3月4日付けの決議11/2002で、穀物などの1次産品に10
%、食肉を含む畜産加工品・工業品に5%の輸出税を賦課した。さらに、同省は4
月5日付け決議35/2002で、穀物、油糧種子、穀粉、植物性油などの農産品に対す
る輸出税を20%に引き上げることを決定した。この決定に対し農業団体などが強く
反発しており、一部の団体は農業ストライキの実施を発表している。(以上の詳細
は、通巻第528号を参照。)

 その後、この課税に対し抗議したパウロン農牧水産食糧庁長官の辞表は4月15日
に受理され、1週間以上たった現在でもその席は空席となっている。農牧水産食糧
庁が抱える課題として、輸出税の取扱いとそれに伴う農業団体との折衝、1kg当た
り乳価を約0.1ペソ(約3.9円、1ペソ=39円)引き上げて、0.3ペソ(約11.7円)
で引き取るよう乳業メーカーに迫っている生産者団体と乳業メーカーとの仲介など
難題が山積しており、就任を了承する実力のある適任者が少ないためである。

 また、4月16日付け決議618/2002には、輸出税20%に分類されたものの課税期
間は、3月4日付け決議11/2002に遡って適用されるとの内容が盛り込まれていた
ため、今度は輸出業者が強行に反対するとともに、課税される場合であってもどの
ような手続きとなるのか細則が策定されていないため、輸出業者は業務活動を停止
した。このため、総理大臣と生産大臣は決議618/2002で定めた課税対象期間の遡
りを撤回し、4月22日までには官報に掲載するとの声明を出したものの、輸出業者
は官報に掲載されるまでは信用できないとして業務活動の停止を継続した。結局、
4月19日付け決議654/2002が22日に官報に掲載されたことにより、輸出税の20%
課税の遡り適用は撤廃され、4月9日から賦課されることとなった。

 また、これらの話と相前後する形で、4月22日から銀行業務が停止している。デ
ュアルデ大統領は、経済危機の最後の打開策として、@現在、強制的にペソ建てで
定期預金化されている預金を、ドル国債化(10年債、利子1.9%、為替レートは1.4
ペソ=1ドル)またはペソ国債化(5年債、利子3.9%)する。Aペソ普通預金を
ドル国債化(3年債、利子2%、為替レートは1.4ペソ=1ドル)、または、ペソ
通貨の普通預金として継続するとする法案を国会に提出している。大統領は中央銀
行からドルが流出することを防ぐため、国会で当法案が成立するまでの間、銀行業
務を停止させるとしていたが、鍋たたきなどの抗議行動や地方州におけるスーパー
マーケットの襲撃が起こったため、銀行の業務停止期限は25日までと宣言した。現
在、法案は国会で審議されているが、反対意見が多く成立の見込みは立っていない。
大統領は、この法案が成立しない場合は、他の暫定大統領を国会が選出すればよい
と、就任以来初めて自分の辞任の可能性について触れており、万一大統領が辞任し、
後任者がいなければ無政府状態に陥る可能性も否めない状況である。

 なお、決議654/2002で20%課税の遡り適用が実施されることはなくなり、22日
からの穀物取引の再開を期待していた輸出業界も、銀行業務停止により極少量の取
引のみにとどまっている。

            輸出税をめぐる決議の経緯
番号
/2002
決議日 官報
掲載日
施行日 主な決議内容
11 3/4 3/5 3/6 輸出税を導入する(穀物などの一次産品10%、食肉を含む畜産加工品・工業品5%)
35 4/5 4/8 4/9 穀物、油糧種子、穀粉、植物性油などの輸出税を20%に引き上げる
618 4/16 4/17 輸出税20%の課税対象期間を決議11/2002まで遡る
654 4/19 4/22 決議618/2002の課税対象期間の遡りを廃止する
 
お知らせ:来週は休刊とさせていただきます。次号は5月14日発行です。
 

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