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インドネシア、輸入食品に「ハラル」表示を義務付け


【シンガポール 宮本 敏行 4月25日発】インドネシアの通商産業大臣は4月8
日、インドネシア・イスラム協議会のガイドラインに従い、飲料を含むすべての輸
入食料品にイスラム教徒が口にできることを示す「ハラル」表示を義務付けると発
表した。これは、昨年に禁止された米国産鶏もも肉の輸入も表示を行えば可能とな
ることを意味しており、米国との関係悪化を避けるための妥協策として注目されて
いる。

 インドネシアは2001年、その前年から大量の安価な米国産鶏もも肉が流入し鶏肉
価格が暴落したことから、輸入許可証を丸鶏のみに与え、実質的にもも肉の輸入を
禁止する措置を講じた。従来、むね肉が好まれる米国では、国内で需要が低いもも
肉の輸出価格を有利に設定できると言われる。インドネシアの通関関係者によると、
99年に約3,700トンであったもも肉の輸入が、2000年には約1万2,700トンに急増し、
その大部分が米国産とされている。

 一方、米国は、インドネシア産エビの輸入停止という報復措置をちらつかせるな
どして同国の態度の軟化を図ってきた。4月上旬には通商代表部のゼーリック代表
がインドネシアを訪れ、メガワティ大統領との会談の中で改めてもも肉の輸入再開
を申し入れている。米国から仲介の依頼を受けた通商産業省は、農畜産物の生産・
流通を所管する農業省およびイスラム協議会と直ちに調整に入ったものの、イスラ
ム協議会は、米国産もも肉を安易に受け入れることは、国内の小規模養鶏農家を窮
地に陥れるとともに国家の尊厳を傷つけることに繋がるとして、断固阻むべきとの
強硬な姿勢を崩さなかった。

 しかし、度重なる交渉の結果、態度を軟化させた同協議会は、ハラル表示を徹底
することによりもも肉の輸入も可能であるとの妥協案を示すに至った。このときに
示されたガイドラインに従い、通商産業省はすべての輸入食品にハラル表示が必須
であるとの前段の公示を行っている。同協議会は、米国内のイスラム団体と連絡を
取り、米国内におけるハラル認定の体制を早急に構築したいとしている。さらに、
豪州やニュージーランド、タイ、シンガポールといった近隣諸国や、アイルランド
などのイスラム団体にも同様の協力関係を求めたいとしている。

 こうした輸入品をめぐる動きの中で、国内の生産者や加工業者の意識も変わりつ
つあるようだ。品質を重視する先進国への輸出の実績を積んだ加工業者の一部には、
グローバル化の中での将来を見据え、逆に米国への輸出に向けて準備を進める者も
いると言われる。農業省も、広い視野を持ち始めた加工業者などに対し、国際的な
競争力を自分で勝ち取る意志を持つことが重要だとして可能な限りのサポートを行
うと表明している。

 米国通商代表部は、今回のインドネシアの要求を大筋で了承したとされており、
近年両国間を隔ててきた鶏もも肉をめぐる案件が解決に向かう可能性も出てきた。
しかし、インドネシアの中でも、国際貿易のルールを重視して米国との摩擦を避け
ようとする通商産業省と、国民の拠り所であるイスラム教の真髄を貫こうとするイ
スラム協議会や国内養鶏産業の衰退を危惧する農業省との温度差は依然として大き
い。また、米国内でのハラル表示に対する鶏肉業界の反応が不透明であることや、
他の食品の輸出国が当表示に対応できるかという問題もあり、今後もこの推移を見
守る必要があると思われる。


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