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【ブラッセル 山田 理 8月1日発】EU委員会は先般、「農業、女性に焦点 をあてて」と題するレポートを公表した。本レポートでは、「農業および農村社 会に対して果たす女性の役割に焦点をあて、EUの基本原則の1つである男女平 等を確かにすることが重要である」と冒頭で述べている。また、女性の存在なく してEUの農業は成り立たないことや、農業および農村社会での男女機会均等を 推進するためになされるべきことが多いことも指摘している。 レポートの概要は、以下のとおりである。 ・農業従事者の3人に1人は女性 欧州においては、農場は伝統的に夫婦を中心とした家族で経営される。97年の 農村構造調査によると、EU15カ国全体で、家族または常時雇用労働者として農 業に従事する者は1,476万人で、このうちの37%を女性が占めている。この比率 は、80年調査(EU9カ国)および90年調査(EU12カ国)でも同程度で、少な くと最近の20年では大きな変化はない。 これとは対照的に、加盟国別に見ると大きな差が見られる。ポルトガル(47%)、 ギリシャ(44%)などの南欧や条件不利地域を多く抱えるオーストリア(42%) などで女性の占める割合が高い。その一方で、イギリス(26%)、デンマーク (28%)などでは低くなっている。 ・女性の2人のうち1人は、農業労働時間が4分の1以下 家族または常時雇用労働者として農業に従事する者の47%では、農業に充てる 労働時間が全労働時間の4分の1以下に過ぎない(農業専業は22%)。こうした 傾向は、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸諸国で強く見られる。 また、同様の傾向は男性よりも女性で顕著に見られ、農業に従事する男性が43 %であるのに対し、女性の54%で、農業に充てる労働時間が全労働時間の4分の 1以下になっている。 ・作物・畜種で大きく異なる女性の割合 農業従事者に占める女性の割合は、農場での生産作物や飼養畜種で大きく異な っている。穀物・畜産の複合経営、園芸作物やオリーブ栽培などで高く、穀物・ 油糧種子栽培、養豚、養鶏などで低くなっている。 ・農家5戸のうち1戸は女性による経営 EU15カ国で農場を経営する女性は130万人で、これは農業経営体数の19%に 当たる。EU12カ国の比較では、ここ10年でわずか1%しか増加していない。女 性が経営する農場の68%は小規模農場で大規模農場は3%に過ぎない(男性の経 営する農場では、小規模52%、大規模9%)。 ・女性による雇用農業労働の3分の2はフルタイム雇用労働者によるもの 常時雇用農業労働者の数は105万人で、農業従事者の7.1%を占める。このうち 女性は23%を占めている。経営者やその家族の農業労働が平均0.42AWU(1A WUは成人1人の年間労働に当たる)であるのに対し、常時雇用者の平均は0.78 AWUと倍近くになっている。また、女性の常時雇用労働者はフルタイムで働く ものが多いこともあり、女性による雇用農業労働の3分の2は、フルタイム労働 者が担っている。 ・中東欧諸国でも重要な女性の役割 ポーランドやルーマニアなどの中東欧諸国においても、農業従事者数が顕著に 減少する中で、女性による農業労働および女性によって果たされる役割は重要な ものとなっている。
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