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【シンガポール 宮本 敏行 8月1日発】マレーシアと豪州はこのほど、イス ラム教徒が食することが可能なハラル食品の生産や流通などの管理体制を整える 共同作業に着手した。両国は、この協力関係を世界的にも需要が増大しつつある ハラル食品市場への本格的な参入の足掛かりにしたいとしている。 マレーシアのラフィダ貿易産業大臣および豪州のベイル貿易大臣は7月28日、 マレーシアのゲンティン・ハイランドにおいて、今後、両国間で取り進めるハラ ル食品の認定・表示基準やマーケティングなどの取り扱いに関する協定にサイン した。これは、マレーシアへの農畜産物の輸出やマレーシア国内に進出した豪州 企業のハラル食品の処理・加工過程をスムーズにすると共に、マレーシアが世界 におけるハラル食品の生産および輸出のハブとなる青写真を描いたものである。 マレーシアの試算によると、世界のハラル食品の市場規模は年間500億ドル(約 5兆9,500億円:1ドル=119円)に上り、今回の協定によって、両国間における 官民レベルの幅広い協力体制の促進が期待されるとしている。 近年の両国関係は、好調な貿易の発展をテコにますます強まる傾向にある。マ レーシアが豪州から輸入する主な品目は、畜産物や砂糖、小麦などの農産物やア ルミなどの金属類といった一次産品であり、豪州のマレーシアからの主な輸入品 目は電化製品および原油となっている。なお、食料品に限って見ると、豪州はマ レーシアにとって第一の輸入相手国である。 ラフィダ貿易産業大臣発表によると、マレーシアの今年1〜5月の豪州との貿 易額は、前年同期比10.3%増の61億リンギ(約1,890億円:1リンギ=31円)と 増加基調にある。また、1997年から今年5月までの期間に、豪州がマレーシアに 対して行った78件の製造業に関するプロジェクトへの投資額は5億2千万リンギ (約161億2千万円)に達しており、こうした面からも両国間の協調路線は一層 強まって行くものと思われる。 また、7月29日にはクアラルンプールにおいて、「アグリビジネスにおける新 たな相互機会」という副題を冠した第7回マレーシア・豪州ビジネス会議が開催 された。この席上で、マレーシアのエフェンディ農業大臣により、前述の協定を 推し進める第一歩として、イスラム教振興省が豪州の食品加工場に検査員を派遣 する計画などが明らかにされた。これによると、同省は、豪州国内のイスラム団 体と提携して、食肉加工場などがハラル基準を遵守しているかを個別に審査する とされている。この基準を満たすとされた加工場では、製品に同省のロゴシール が添付され、将来的にはこの協定を通して両国によるハラル食品の新ブランドを 創設する計画も披露された。会議に同席したベイル貿易大臣も、両国の経済に大 きな利益をもたらすものとして、同プロジェクトの将来に期待したいとしている。 今回の例に限らず、イスラム教徒が多い東南アジア地域では、ハラル食品の需 要増大に対応する動きが目立ってきた。例えば、フィリピンでは、昨年5月に口 蹄疫のワクチン非接種清浄地域となったミンダナオ島を、将来的な輸出を視野に 入れたハラル食品の生産基地に育成していこうとする動きも見られる。今回、イ スラム国家のマレーシアと農畜産物の一大供給国たる豪州が手を携えたことで、 世界のハラル食品の需給に影響を与える可能性もある。
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