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【ワシントン 渡辺 裕一郎 8月1日発】米国政府は7月25日、世界貿易機関 (WTO)の農業交渉提案を公表した。これは、来年3月末までのモダリティー (交渉の大枠)の確立に向け、2000年6月および11月にWTOに提出された当初 提案の内容(本紙通巻第443、463号参照)をより具体化したものである。くしく もそのタイミングは、日本での5カ国農相会議の開催前日であり、また、「意欲 的な提案」と形容する割には、自国にとってなるべく痛みが伴わなくて済むよう な内容であるなど、米国の高慢さが露骨に表れたものであるとも言えよう。 提案は、@(各国を)同じ土俵に立たせ、(各国間の)不公平を取り除くこと、 A貿易障壁の撤廃に向けて取り組むこと、B生産者、消費者双方の利益になるよ うに、世界市場を拡大すること、という3つの原則に基づくものであるとされる。 その内容は、基本的に当初提案の延長線上にあるものであり、いわゆる「保護の 削減」の方式および目標数値が明らかにされるとともに、交渉終結から当初5年 間とそれ以降という2段階のアプローチが示されているのが新たな特徴である。 具体的には、次のとおりである。
第1段階(当初5年間) ・輸出補助金:段階的に撤廃 ・市場アクセス:高関税ほど大幅に引き下げる方式により、すべての品目の関税率を25%以下に削減。関税割当(TRQ)品目については、アクセス数量を20%拡大し、枠内税率を撤廃 ・国内支持:貿易わい曲的な国内支持(黄の政策)についての助成合計総量を農業生産総額の5%水準にまで削減。 第2段階(最終期限は交渉結果による) ・すべての関税と黄の政策を最終的に廃止 |
本提案は、当初提案と同様に、関係団体の代表などから成る農業政策/農業技 術諮問委員会からの助言も仰いで策定されたものであり、そのメンバーである、 全米最大の農業団体ファーム・ビューロー(AFBF)をはじめ、畜産関係では、 これまでに全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)や米国乳製品輸出協会(US DEC)など、多くの主要団体が支持を表明している。 しかし、同じメンバーである、中小の家族経営が主体のファーマーズ・ユニオ ン (NFU)は、「新農業法の下でのセーフティ・ネットを縮小させるととも に、将来に必要な保護(国内支持や国境措置)が講じられなくなる恐れがある」 として失望のコメントを出している。(参考:ベネマン農務長官は、新たな保護 削減の開始は交渉終結後(交渉期限は2005年1月1日)であるため、新農業法の 実施期間(2002〜2007年)とはわずかに重なるだけであるとして、交渉提案と新 農業法が矛盾することはないという趣旨の発言を行っている。なお、米国は今回 の交渉提案の中で、助成額が生産額の5%以下の国内助成については削減対象外 とする「デミニミス条項」(これがないと米国は国内支持の約束水準をすでに突 破)は存続させるとしているが、一方で、「デミニミス条項」によって削減対象 外とはならなかった「黄の政策」を積み上げたものだけ農業生産総額の5%水準 まで削減するという主張は、果たして筋が通ったものであると言えるのだろうか。) また、手厚い国内支持とTRQによって支えられた酪農産品を抱える全国生乳 生産者連盟(NMPF)は、@輸出補助金の撤廃を前提に、市場アクセスの拡大 や国内支持の削減を行うとする本提案の戦略的なアプローチについては支持する としつつも、Aその戦略の中には輸入急増に対処するためのメカニズムが含まれ ていないとして、現行の特別セーフガードに代わるより実効性のある措置を提案 すべきであるという声明を出すなど、不協和音も聞かれるところとなっている。
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