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フィードロット頭数回復も干ばつの影響を懸念


【シドニー 粂川 俊一 8月22日発】豪州フィードロット協会(ALFA)
は8月12日、豪州食肉家畜生産者事業団 (MLA)との共同調査による四半期
ごとの全国フィードロット飼養頭数調査の結果を発表した。これによると、総飼
養頭数は2002年6月末時点で前年同月比6%増の73万5千頭で前期(3月末時点)
の調査時との比較では12%も増加し、この調査が始まって以来2番目に高い水準
となった。

 なお、前期の調査では日本での牛海綿状脳症(BSE)の発生で減少したフィ
ードロット飼養頭数が回復の兆しを示していた。




 フィードロット飼養頭数を州別に前期と比較してみると、全国の5割以上を占
めるクインズランド(QLD)州は、増加率では26%、頭数では全体の増加分8
万頭にほぼ匹敵する7万9千頭となっている。主な要因は、干ばつの影響により
小規模から中規模のフィードロットに対する肥育素牛の導入が増加したためとし
ている。その他の州においても、ビクトリア(VIC)州で11%、ニューサウス
ウェールズ州で4%増加しているが、ともに大規模なフィードロットでの導入頭
数の増加が反映されたものである。なお、VIC州は前年同期比では14%減とな
っている。

 一方、南オーストラリア(SA)州では34%、西オーストラリア(WA)州で
は11%、それぞれ減少している。SA州の減少は大規模なフィードロットでの操
業縮小を受けたものとされる。WA州については、前年同期比では28%増と、年
ベースでは増加を続けており、同州において季節的な放牧飼養からフィードロッ
トを利用した通年での飼養に移行しつつあることの表れとしている。

 フィードロットの収容可能頭数に対する利用率は全体で82%と前回調査から8
ポイント増加しており、中でもQLD州では88%と前回から16ポイントも大きく
増加した。

 また、仕向け先別に見ると、輸出向け飼養頭数が39万8千頭でフィードロット
飼養頭数全体の54%、国内向けが31万1千頭で同42%となり、3月末と比較して
輸出向けが9%、国内向けが13%の増加となっている。輸出向けで、前回大きく
増加した韓国向けは大きな変化がなかったものの、輸出向けの90%を占める日本
向けの10%近い回復が大きく反映している。

 国内向けの増加傾向は、国内でも最近徐々にフィードロットで飼養され生産さ
れた牛肉が浸透し始めたことを示すものでもあるが、今回の調査結果については、
東部州における干ばつの影響が主な要因とされ、放牧飼養が困難な干ばつ時にお
いては「飼料付き牧場」(paddocks with feed)であるフィードロットへの導入
が高まったためとみられている。このことは、仕向け先が不明の「その他」頭数
の大幅な増加にも表れている。

 ALFAでは、日本向けの回復基調の継続に期待しつつも、干ばつの影響に懸
念を表している。現在の飼料穀物の供給と価格の動向は、日本市場において米国
にシェアを奪われた94年の干ばつ時の状況に似てきていると分析しており、特に
「冬穀物(大麦、小麦)の収穫を迎える今年のクリスマス以降の飼料穀物の確保
や価格の動向が不安定要素となる可能性を示唆している。飼養動向の回復基調も
つかの間、フィードロット業界にとって新たな懸念材料が立ちふさがりつつある。

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