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【シドニー駐在員 幸田 太 11月28日発】 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA) は11月20日、年次総会において、家畜取引課徴金(Cattle Transaction Levy : CTL)の値上げを議決事項の1つとして提案したが、生産者からの賛同を得ら れず、引き続き懸案事項となっている。現在、MLAの主な活動財源は、生産者 が家畜を取り引きする際に納める1頭当たり3.5豪ドル(約245円:1豪ドル=70円 )の課徴金によって賄われている。 今回のCTLの値上げは、そもそも豪州肉牛生産者協議会(CCA)から提案 されていたもので、その内容は、豪州産牛肉の販売に苦戦を強いられている日本 や近年販売が好調な韓国および近年食肉に占めるシェアが低下している国内マー ケットでの牛肉のプロモーション活動を強化するため、CTLを現行の 3.5豪ド ルから4.0豪ドル(約280円)に引き上げるというものであった。ちなみに、2000 年の豪州の国民1人当たり鶏肉消費量が、10年前と比べて32.0%増の32.9キログ ラムと大幅に伸びている一方で、牛肉については 36.3キログラムで、同 8.3% の減少となっている。 同案が可決されるには、投票数の75%の賛同を得なければならなかったが、結 果は45.7%と可決には大きく及ばなかった。CCAでは、干ばつにより肉牛生産 のコストが増加している時期であり、これ以上生産者の負担を増やせないとして、 CTLの値上げ提案を来年の総会でまで延期したいとして、MLAの総会前にC CA自らが掲げた提案を取り下げる意向を示していた。しかしながら、財政の脆 弱さを懸念するMLAが半ば強行的に議案として採決したことが、投票者の混乱 を招き、否決の原因の1つとなった。 CTLは60年から家畜のと畜時に徴収される課徴金制度として実施され始め、 80年代にはすべての家畜の取引時に行われるものに改正された。また、生体家畜 の輸出時にも徴収されることとなり、91年に第一次産業徴収支払法(Primary Industries Levies and Charges Act 1991)により法制化された。 CTLは、他の第一次産業課徴金と同様に連邦政府の農林漁業省により徴収・ 管理され、MLAは、毎年総会で生産者が決定した使途に応じた財源を受けてい る。 現在徴収されているCTL(3.5豪ドル)の使用内訳は、2.88豪ドル(約202円) がMLAの活動財源にされている他、0.32豪ドル(約22円)が食肉の動物用医薬 品の残留検査プログラムである全国残留物質調査(National Residue Survey)、 0.30豪ドル(約21円)が家畜伝染病の防疫管理を行う豪州動物衛生協議会(Animal Health Australia)へ交付されている。なお、本総会では、全国残留物検査への 交付分を0.20豪ドル(約14円)減額し、その分を新たにMLAがDNA新技術等 の研究開発の財源として使用する提案がなされ、採決の結果承認された。 報道によれば、MLAの2002年の肉牛部門からの課徴金収入は、皮肉なことに、 干ばつで早期に家畜を販売する生産者が増加し、昨年を230万豪ドル(約1億6,100 万円)上回る結果が予想されている。 豪州検疫検査局(AQIS)は11月26日、干ばつの影響により、飼料穀物不足 や価格が高騰していることに配慮し、かねてから申請があった飼料穀物の輸入を 許可すると発表した。輸入申請が許可された飼料穀物は、米国産ソルガム25万ト ン、同イエローコーン4万8千トン、イギリス産小麦5万トンとなっており、 2003年1月に到着する予定である。しかしながら、原則として、輸入飼料を国内 で使用する際には、破砕、薫蒸を行うことが条件となっているため、コストが割 高となる可能性があることから、国産品との価格競争力を疑問視する見方もある。 なお、報道によると豪州では、飼料用穀物の輸入が許可されたのは10年ぶりとさ れる。
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