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EU委、EU加盟交渉での農業分野の計画を提案


【ブラッセル駐在員 山田 理 1月31日発】EUへの加盟を希望する国は現在、
10カ国の中東欧諸国に加え、キプロス、マルタおよびトルコの計13カ国に上る。こ
のうち、トルコを除く12カ国とは、実際に加盟交渉が開始されており、交渉が遅れ
ているルーマニア、ブルガリアを除く10カ国については、早ければ2004年にもEU
への加盟が実現するとみられている。

 こうした中、EU委員会は1月30日、EU加盟交渉での農業分野の戦略(Strate
gy)を提案し、共通農業政策(CAP)の中で新規加盟国をどのように取り扱って
いくかの考え方を示した。その概要は次のとおりである。

1.農業関係支出総額

 新規加盟国(10カ国)に対するEUの農業関係支出は、ベルリン首脳会議で決定
された財政的な枠組みを遵守するものとなっている。項目別の支出見込みは下表の
とおりである。

         (単位:百万ユーロ)
   2004年 2005年 2006年
直接支払い 1,173 1,418
市場政策 516 749 734
農村開発 748 1,187 1,730
合計 1,264 3,109 3,882
 なお、直接支払いに関しては、各国が支払った額について、翌年EU予算から充
当される仕組みのため、2004年は計上されていない。

2.農村開発の推進

 新規加盟国の農村地域が抱える構造的問題の解決を図るため、加盟後の農村開発
対策については、EUの補助限度を80%とする。

3.準自給農家に対する特別対策

 加盟候補国では多くの準自給農家(小規模零細農家)が存在するが、存続可能な
経営体への転換を促すため、定額の補助金(最大750ユーロ)を創設する。

4.直接支払いの段階的引き上げ

 直接支払いの性急な導入が、低い生産性や生産基準、高い潜在失業率などの構造
的問題の解決を妨げる懸念がある。加盟当初は既加盟国の25%程度の水準に抑え、
その後2年間で5%ずつ引き上げる。最終的に2013年に100%の水準に段階的に引
き上げていく。

5.国別の上乗せ支払い

 加盟前の補助水準が加盟後導入される直接支払いを上回っている場合には、農家
に対する激変緩和措置として、EU委員会の承認を得て、加盟前の補助水準を上限
とした上乗せ支払いを実施できる。ただし、補助の合計額は、既存の加盟国での直
接支払いの水準を超えることはできない。

6.直接支払いの簡易導入

 新規の加盟国では、当初3年間の移行措置として、簡易的な直接支払いを選択で
きる。すべての農地が対象となり、直接支払いの単価は、直接支払い予算と農地面
積から計算される。直接支払いの交付に関して管理機能が適正に働いていない場合
には、その後も簡易的な直接支払いが継続され、問題の解決まで直接支払いの引き
上げは凍結される。

7.生乳生産枠の設定

 生乳生産枠(ミルククオータ)の設定に当たっては、97〜99年の統計データを用
いることを提案する。

 EU委員会のフィシュラー委員(農業、農村開発、漁業担当)は、今回の提案に
ついて、「移行期間後はすべての加盟国に対して、1つのCAPが適用され、2つ
の農業政策が存在するわけではない」と述べている。
 

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