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【シドニー駐在員 粂川 俊一 1月31日発】豪州の大手乳業メーカー・ナショナ ルフーズは1月25日、チーズメーカー・キングアイランドの買収を事実上完了した ことを発表した。同社は、高級チーズの名門と言われるキングアイランドの買収に より、本格的にチーズ事業に参入することとなる。 同社は同日までに、キングアイランドのおおよそ93%の株式を取得し、実質的な 所有権を獲得したことを発表した。この買収は、昨年11月26日に正式に発表され、 時価の倍以上の1株3.25豪ドル(221円:1豪ドル=68円)という条件で90%以上 の株式を取得する総額約7,700万豪ドル(約52億円)の計画に基づき進められてい た。なお、残りの未買収の株式も問題なく獲得することが可能としている。 同社は、チーズ市場における強力なブランドを獲得したことに満足の意を表明す るとともに、この買収により期待される効果を次のように挙げている。 @ 非常に強力でプレミアムに富み、質の高いブランドの獲得が、同社がこれまで 本格的に参入していなかったチーズ市場において高い価値を持つ部門として堅固 な存在となる。 A キングアイランドブランドおよびその専門的な製品が、同社のナショナルブラ ンドや飲用乳・乳製品各部門における主要な製品を強力に補完する。 B キングアイランドの持つ豪州のデリカテッセンや特別な食品販売店へのアクセ スなど専門的な国内流通ネットワークが獲得できる。 また、同社はこの買収に先立つ昨年12月18日、中国におけるヨーグルト事業の展 開を目指し、イースト・アジアティック・カンパニー(EAC)から、中国向けの ヨープレイトのフランチャイズ(販売権)を獲得する計画を発表している。 買収の対象となるヨープレイト事業は、上海を拠点に95年に設立されたもので、 年間で4千トンのヨーグルトを生産し、1千万豪ドル(約7億円)の売上げを持つ という。買収金額は製造施設の移転や拡張の費用を加えて、最高で3千万豪ドル (約20億円)とされている。 同社では、国際的な事業展開を目指す方針上、特定地域のヨープレイトのライセ ンスを獲得する戦略を進めており、すでに香港などでフランチャイズを持っている。 今回の計画は、今後の中国の購買力の増加に期待しつつ、その戦略遂行プロセスに おいて非常に重要なステップであるとしている。また、買収費用については、活力 ある市場に入っていくコストとしては魅力的なものであり、すでに設立された事業 を獲得することによって、新たな国の市場に参入する際のリスクを最小限にするこ とを念頭に置いているとしている。なお、その地域の知見や専門知識を獲得するた めに、地元企業との合弁などにも期待している。 さらに、同社はニュージーランド・デイリー・フーズ(NZDF)の買収にも名 乗りを上げていると報道されており、乳業界の再編が進む中、意欲的な事業拡大を 指向している。 ただし、NZDFの買収については、競争相手としてNZの巨大乳業メーカー・ フォンテラの名前も報道されており、フォンテラが同社の20%近い株式を保有して いることや、キングアイランドの買収においても、一時、フォンテラが対抗に出る のではというような噂がマスコミで報道されるなど、豪州における乳業メーカーの 動向にはフォンテラの存在が見え隠れする状況にある。
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