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【シンガポール駐在員 小林 誠 1月31日発】インドネシアの地場資本としては 食品産業最大手のインドフード・グループは、今月中旬、東ジャワ州の州都スラバ ヤにほど近いパスルアンに3,500万米ドル(約46億9千万円:1ドル=134円)を投 じて新たな乳業工場を建設する計画を発表した。同工場の建設は、近々開始される 予定で、試験操業期間を含めての工期を約1年としており、2003年の早い時期に本 格操業を開始する予定であり、低い乳価に苦しむ州内酪農家の期待を集めている。 政府は、98年の通貨危機による経済の悪化を立て直すため、同年、国際通貨基金 (IMF)との間で融資に関する合意書を交わした。この合意に基づき、政府はそ れまで国内の酪農産業の保護を目的として行ってきた価格政策や輸入制限措置など の政策を撤廃しており、同国の酪農産業は国際競争の波にさらされることとなった。 また、ローカルコンテント(原料の一定割合を国産調達しなければならない規則) 制度も廃止されたため、乳業各社は輸入原材料への依存比率を高めている。 東ジャワ州は、同国の生乳生産量約38万トンの5割以上に相当する約20万トンを 生産している。同州の生産者乳価は、乳業最大手のネスレ社と酪農協同組合(GK SI)との交渉によって決定されている。今年に入って両者は、現行1リットル当 たり1,515ルピア(約21.7円:100ルピア=1.43円)の乳価を同1,771ルピア(約25. 3円)に引き上げることで一旦合意した。今回の引き上げの基礎となったのは、豪 州の乳価(1,482ルピア=約21.2円)に関税等相当分10%を加算し、さらに乳固形 分12%を超える場合のプレミアとして40ルピア(約0.6円)と1ml当たりの総菌数 が100万個を下回る場合のプレミアとしての100ルピア(約1.4円)を加算した合計 金額である。 今回の品質基準は、生乳に関して定められた同国の国家規格(INS:Indone sian National Standards)に基づくものだが、東ジャワ州のGKSIによれば、同州 で生産される生乳のうちこの規格を満たしているものは0.8%にすぎず、大半の酪 農家は乳価引き上げの恩恵を受けることができない見込みである。同州で生産され る生乳で最も問題なのは、総菌数の多さであり、ほとんどの生乳の総菌数は1ml当 たり300万〜600万個と、今回の基準値の数倍に達している。このため、今回の合意 内容が実施されれば、多くの酪農家は期待したほどの乳価が得られないばかりか、 逆にペナルティーや受け入れ拒否を受ける可能性も出ている。このため、最近にな って政府も合意内容についての再交渉を求めている。 州内の酪農家は、今回のインドフードの大規模乳業工場の新設により、現在のネ スレ社の独占状態が崩れ、乳価引き上げがより現実的なものになることを期待して いる。
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