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【ワシントン駐在員 樋口 英俊 1月31日発】米農務省(USDA)は先ごろ、 2002年の農家経済予測を発表した。これによれば、現金所得(Cash Receipt)は、 作物および畜産部門ともに前年水準を上回ることから、農産物全体では前年比1.2 %増の2,043億ドル(約27兆3,762億円:1ドル=134円)と予測されている。 作物部門では、綿花やコメなどが前年を下回るものの、穀物類の価格上昇などに より、全体としては、前年比2.2%増の979億ドル(約13兆1,186億円)と予想され ている。 一方、畜産部門の現金所得については、養豚、酪農が前年をそれぞれ4.2%およ び9.2%下回るものの、肉牛およびブロイラーがそれぞれ3.1%および11.3%増加す ることから、全体としては、前年をわずかに上回る1,064億ドル(約14兆2,576億円) と見込まれている。 作物部門の主な支出については、前年を1.6%下回ることが予測されている。こ れは種子や農薬価格が若干値上がりする一方で、作付面積のわずかな減少や、肥料 価格の値下がりによるものである。また、USDAは、ここ数年の市場価格の低迷 に対応するために、より多くの生産者が投入コストの低減につながる生産方法(精 密農法、統合的な害虫管理など)を採用していることも、支出減少の一因であると 指摘している。 畜産関連の支出については、飼料費がトウモロコシ価格の値上がりにより、前年 を7%上回るものと見込まれている一方で、素畜費は昨年に引き続き、前年水準を 下回る(7%減)と予測されている。畜産部門での支出の大部分を占めるこれらの 支出項目の合計では、前年を2.4%上回ることが見込まれている。 農産物全体の純現金所得(Net Cash Income)は、前年比14.5%減の509億ドル (約6兆8,206億円)と予想されており、94年以来最低の水準となる。この要因とし ては、政府補助金からの収入を前年の約半分程度と見込んでいることが大きい。昨 年は211億ドル(約2兆8,274億円)が支出され、そのうち約91億ドル(約1兆2, 194億円)が、新たな立法措置により実施された緊急農家支援措置に関するもので あった。今回の予測では、緊急措置に当たる部分の扱いは未定であるため、既存の 制度のみが前提とされた。なお、既存の制度下では、作物価格の値上がりにより、 ローン不足払い制度に基づく支出が減少すると予想されている。 政府補助金の減少については、粗現金所得(Gross Cash Income)に占める政府 補助金の割合の大きい小麦(30%)、トウモロコシおよび大豆(20%)などの専業 農家が最も大きな影響を受けるものとみられる。 こうした政府補助金の動向が、今年の農業所得にも大きな影響を与えることは間 違いないが、その動向を左右する次期農業法案の議論の進ちょくは、依然として不 透明なままである。ブッシュ政権は、大統領自らが1月30日の議会指導者との会談 で「次期農業法を片付ける時が来ている」と述べ、議会での速やかな成立に向けた 動きを促した。一方、上院の関係者によれば、上院多数党の指導部は、景気対策関 連法案が終了次第、次期農業法案の審議を再開したいとの意向を有している。しか し、昨年末の審議でも明らかなように、同法案をめぐる両党の溝は深く、今後も予 断を許さない。
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