ALIC/WEEKLY


2002年の生乳生産、3年連続の減少見込み(アルゼンチン)


【ブエノスアイレス駐在員 玉井 明雄 2月6日発】アルゼンチンの生乳生産量
は、施設の近代化や加工処理能力の拡大などを背景に、92年以降一貫して増加し、
99年は1,033万キロリットルに達した。しかし、乳価下落による酪農家の廃業増加
に伴い、2000年に前年比5.0%と減少に転じて以来、2001年、2002年も、それぞれ
前年比5.6%、5.1%の減少が見込まれている。こうした予測が現実のものとなれば、
同国の生乳生産量は、2000年以降3年連続で前年を下回ることになる。

 アルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)が1月25日に発表した需給報告書による
と、2001年の生乳生産量は、前年比5.6%減の927万キロリットルと見込まれている。
この減少要因として酪農家の廃業のほか、夏場の記録的な猛暑や口蹄疫の発生で乳
用経産牛1頭当たりの乳量が低下したこと、酪農地帯において降雨過多による浸水
の影響で飼養状態が悪化し、搾乳のピークである春季の生乳生産量が伸び悩んだこ
となどを挙げている。

 2001年の生乳価格(乳業メーカーによる生乳1リットル当たりの生産者支払価格)
の動向については、上半期はやや前年を上回る水準で推移したが、下半期は前年を
下回って推移した。例年、乳価は、下半期後半の春季に下落局面に入る。しかし、
2001年は、下半期前半の冬季の7月頃から下落し始め、11月は前年同月比で13.5%
安となった。こうした乳価の低落要因としては、輸出不振による国内供給量の増加、
乳質の低下などを挙げている。また、乳質の低下は、浸水の影響による牧草の質の
低下、乳用経産牛の口蹄疫感染、穀類などの補助飼料給与量の減少などによるもの
としている。

 2001年における牛乳・乳製品の輸出量については、農畜産品衛生事業団(SEN
ASA)の統計によると、前年比18.3%減の14万9千トン(製品重量ベース。ただ
し、牛乳は粉乳換算ベース)となった。特に、2000年に総輸出量の約7割(12万8
千トン)を占めたブラジル向けが、ブラジルの通貨レアルの安値傾向などにより、
前年比58.4%減の5万3千トンと大幅に減少した。また、アルゼンチンにおける口
蹄疫の発生により輸入国が同国産乳製品に対する輸入規制措置を実施したことも減
少要因の1つとしている。

 2002年の生乳生産量は、前年比5.1%減の880万キロリットルと見込まれている。
この要因としては、@アルゼンチン政府による経済政策の変更に伴う金融業務の混
乱などにより、生産者は代金回収や各種支払いなどにより多くの時間を費やさねば
ならず、その結果、家畜の飼養管理に費やす時間が減少すること、A通貨切り下げ
による影響でコスト高となる補助飼料の給与量が減少すること、B浸水の被害を受
けた酪農地帯において牧草の回復が遅れていること、C収益性の悪化を嫌い酪農家
の廃業が増加すること、D地方の乳業工場が閉鎖されていることなどを挙げている。

 また、2002年の輸出動向については、同年1月上旬の通貨切り下げによりアルゼ
ンチン産牛乳・乳製品の輸出競争力が高まるものとみられるが、同国の経済政策が
相次いで変更される中、先行きは依然不透明であるとしている。


元のページに戻る