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【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 2月7日発】ブッシュ大統領は2月4日、20 03年度(2002年10月〜2003年9月)の予算案(予算教書)を明らかにした。景気後 退の影響で2002年度は赤字財政に転じることが予想されているにもかかわらず、20 03年度についても、昨年9月の同時テロを契機とした国土安全保障(homeland security)対策の強化などにより、対前年度比3.7%増の総額2兆1,280億ドル (約285兆円:1ドル=134円)の積極予算が提案されている。 この中の2003年度の米農務省(USDA)の予算案も、昨年度の予算案に比べ11 億ドル(約1,500億円)増の総額744億ドル(約9兆9,750億円)が計上されている。 特に、国土安全保障対策の一環として、動植物検疫措置や食品の安全性確保対策に、 1億4,600万ドル(約200億円)増の23億6,700万ドル(約3,170億円)を充当するこ ととしている。中でも、@口蹄疫や牛海綿状脳症(BSE)についてのサーベイラ ンスやモニタリングの強化、A港湾や空港で検疫業務を行う検査官の増員(2000年 度2,567人→2003年度3,974人)、B約7,600人の検査官による食肉、食鳥、卵の検 査体制の維持やIT関連施設の整備などが主な対策として挙げられている。 また、貿易促進のためのプログラムとしては、64億ドル(約8,600億円)が計上 され、特に、乳製品の補助金付き輸出を図るための乳製品輸出奨励計画(DEIP) については、現実には内外の市況に左右されるとしながらも、6,300万ドル(約84 億円)が織り込まれている(2001年の支出実績は800万ドル(約10億円))。その ほか、遺伝子組み換えなどの新しい作物について、輸入国サイドのニーズに応える ための検査プログラムの拡充なども別途想定されている。 酪農対策としては、現行の96年農業法により99年末で廃止予定だった加工原料乳 価格支持制度(乳製品の買い上げによる乳価の間接的支持)について、度重なる延 長の後、最近では、昨年11月に成立した2002年度農業歳出予算法によって、従来ま でと同水準の9.90ドル/100ポンド(約29円/s)の支持価格で、本年5月末まで 存続させることが決定されている。このため、今回の予算案では、白紙の扱いとな っているが、下院の次期農業法案では2011年末まで、同上院案では2006年末までの 期間延長が、それぞれ規定されており、当分の間の制度存続は確実視されている。 なお、今回の予算案では、次期農業法案の実施のために、今後10年間で735億ド ル(約9兆8,620億円)の追加的財源を充てることもうたわれている。これは、昨 年5月に上下両院で承認された予算決議の水準が、ブッシュ大統領によって今なお 担保されていることを示すものであり、次期農業法案の早期成立を目指す議会への 力強い約束とも言える。ただし、議会を通過した次期農業法案の内容を大統領が無 条件に認めるというわけではなく、ベネマン農務長官の当日の記者会見での発言に もあるように、「貿易協定に整合的で、環境保全を推進し、農家積立口座のような 新しいリスク・マネージメント手段を提供するものであるべき」との姿勢を崩して はいない。
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