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ミルクに関する検討委員会報告書を公表(イギリス)


【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 1月10日発】イギリス環境食料農村地域省(D
EFRA)は1月3日、ミルクに関する検討委員会報告書を公表した。この検討委
員会は、2000年12月に、ブラウン農業大臣(当時)によって設置された。委員会メ
ンバーは計11人で、座長のアバディーン大学(農業経済)トムソン教授のほか、生
産者団体および乳業団体の代表者などが参加しており、政策、各流通段階における
幅広い項目について、その効率化に向けた提言を行った。

 なお、2001年8月には、農業・食料の将来に関する政策委員会が発足したため、
今回の報告書は、同政策委員会との無用の重複を避けるように配慮されている。

 報告書の概要(抜粋)は次のとおりである。

 牛乳乳製品取引および乳業の構造についての分析に基づき、さまざまな分野にお
ける効率性改善の可能性を検討した。業界全体としての将来のためには、生産・加
工・小売の各部門における適正な投資が重要であることは明らかであるが、投資は
事業への自信が頼りであり、自信は政策・取引・経営上の問題の複雑な混合に左右
されるものである。

@政策

 共通農業政策(CAP)の生乳クォータ制度が高支持価格を形成し、多くの非効
率性を生み出している。クォータ制度が続く間は、官僚的な形式主義を最小限にし、
制度をできるだけ柔軟性あるものとすべきである。また、不当に高い調整金やCA
Pの不平等な合理化により、イギリスの酪農家が他のEU諸国と差別されないよう
にすべきである。他のEU諸国で生産されるすべての乳製品は、イギリスで生産さ
れるものと同じ食品安全および動物福祉基準に沿ったものとすべきである。

A補助事業

 補助金の交付の遅れが申請者数の低さの原因にもなっていると思われるが、申請
から交付までの期間の遅れを最小限にすべきである。

B酪農

 酪農の低収益性が投資水準の低い原因となっている。もしこの状態が続けば、長
期的な問題となるだろう。委員会からの勧告で直接に解決できる問題ではないが、
我々の分析、特に「より良い理解」についての勧告が間接的に助けになることを期
待する。

C業界構造

 収益を高めるために、生産者組織の大型化の動きがあり、一部には加工分野への
進出希望がある。確かに、大きな組織では、会員のためのより良い価格を交渉でき
るだろうが、ある程度の生産量について、代表組織が全国的な合意を取り付けるこ
とが可能か検討してみることは価値があるかもしれない。また、酪農家が事業評価
を行うためのベンチマーク・システムは十分に活用されておらず、酪農振興理事会
(MDC)はインターネットによるベンチマーク・データの提供を検討すべきであ
る。DEFRAは農家経営調査結果をより利用し易くすべきであり、生乳購入者
(乳業)は、ベンチマークでの役割を検討すべきである。

D小売

 スーパーマーケットが新製品を支持しないという不満があるが、製品の欠陥であ
る場合もあり、スーパーマーケットと供給者のより良い連絡関係が必要と思われる。

Eより良い理解

 生産者、生産者団体、加工業者、製品の最終購入者間の対話が、正しい製品とサ
ービスを提供するためには不可欠である。調査については、特に、取引・消費者問
題に関する課題の重複が多い。不要の重複を避けるため、できる限り、業界組織は
調査開始に当たってまず相互に相談すべきである。 


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