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【シンガポール駐在員 宮本 敏行 1月10日発】タイの大手総合食品会社である CPF(チャロン・ポカパン・フーズ)社が2001年12月中旬に発表したところによ ると、同社は2003年までに、千ライ(160ha:1ライ=約1,600平方メートル)の敷 地を利用して鶏肉生産に係る大規模な複合施設を建設する。同社は、ここに鶏の飼 養から鶏肉生産までを一貫して行える体制を整え、近年、世界的に拡大する鶏肉需 要に備えるとしている。タイにとって主要な輸出市場である日本や欧州では牛肉に 対する鶏肉の代替需要が増大しており、この傾向が長期化するとにらんだものとみ られる。 CPF社によると、同施設はバンコクの北東250kmに位置するナコン・ラチャシ マ県に建設される。プロジェクトの総予算は40億バーツ(約120億円:1バーツ= 3円)で、第一段階として2002年早々には25億バーツ(約75億円)が、残りは2003 年の竣工までに随時投入される予定である。敷地内には鶏の飼養を行う農場や配合 飼料などを生産する飼料工場、需要が急速に高まる鶏肉調製品の製造を主眼とした 処理加工場の建設が予定され、一貫した効率的な鶏肉生産が可能となる。計画によ ると、新工場には鶏の内臓を自動的に除去する装置など最新の技術が投入され、世 界でもトップレベルの衛生的な鶏肉生産が実現できるとしている。また、徹底した オートメーション化によって大幅な人件費の削減も期待できるとしており、バンコ ク工場が二交代制で6千人の従業員を抱えるのに対し、新工場では僅か1千人の雇 用にとどめることができるという。CPF社は、こうした衛生面やコスト面での優 位性をテコに、近年は同様に輸出を伸ばしているブラジル産鶏肉の追い上げを振り 切りたいとしている。 タイブロイラー加工輸出協会によると、2001年におけるタイの鶏肉輸出は前年比 26.2%増の42万トンが見込まれている。世界的な鶏肉需要の増大で輸出価格も高騰 しており、2001年12月のもも肉の輸出価格は、前年同月の約2倍の1トン当たり2, 250USドル(約29万3千円:1USドル=133円)と大幅に上昇している。そうし た中、鶏肉輸出全体に占めるCPF社のシェアは30%に及ぶとされる。同社は毎週、 サラ・ブリ県とバンコクの加工場で300万羽の鶏を処理しているが、新工場が稼動 すれば、さらに100万羽の処理が可能となる。CPF副社長のウルナモン氏は、プ ロジェクトが完了する2003年には、このシェアを35%に拡大できる見通しを示して いる。 しかし、一方では、米国のファストフード大手のマクドナルドが、タイ資本との 合弁事業で養鶏事業に本格的に参入する計画を明らかにするなど、タイの鶏肉生産 を舞台に各社の競争も激化する様相を見せている。同社はすでに子会社のマッキー フーズ社を通じてタイ国内で鶏肉生産を行っており、国内流通を手がける傍らでフ ィリピンをはじめとしたアセアン諸国へ鶏肉調製品などを輸出している。 業界関係者によれば、2001年のタイ鶏肉業界はこの30年間で最高の輸出ブームに 沸いたとされており、主要市場における畜産をめぐる状況から今年もタイの鶏肉輸 出に力強い追い風が吹き続けるものとみている。CPF社は今年の売上を前年比10 %増の770億バーツ(約2,310億円)と試算しているが、国内外での競争が激化する 中でタイの鶏肉業界をけん引する旗頭である同社がいかに健闘を見せるか注目され る。
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