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米農務省、今後もHACCP徹底のためサルモネラ菌検査を継続


【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 1月10日発】米連邦控訴裁判所は昨年12月上
旬、サルモネラ菌検査に不合格であることのみをもって食肉加工場を閉鎖させる権
限は米農務省(USDA)にはないとして、2000年5月の第一審判決を支持する裁
定を下した。

 96年7月に制定された現行のHACCP規則の下では、USDA食品安全検査局
(FSIS)はHACCPシステムが有効に機能しているかどうかを判断するため、
ひき肉工場に対するサルモネラ菌の削減達成基準を設け、3回目のサンプル検査で
もその基準が達成されていないことが判明した場合には、直ちに当該工場での食肉
検査を中止するという仕組みとなっている。

 本件は、このサルモネラ菌検査に3回とも不合格となって事実上の工場の操業停
止に追い込まれたテキサス州の大手ひき肉製品製造会社・シュープリーム・ビーフ
・プロセッサーズ社がUSDAを相手取って起こした裁判に端を発するものであり
(「畜産の情報・海外編 2000年8月号」トピックス欄参照)、その後、第一審で
敗訴したUSDAが上訴したため、引き続き工場閉鎖を強いられた同社が2000年9
月に倒産するという事態をも招いている。

 ただし、今回の判決は、原告側のシュープリーム社にとっては遅きに失したもの
であると同時に(注:同社が操業再開の意図を有しているかどうかは不明である)、
USDAにとっても、大幅な権限の縮小や政策変更を余儀なくさせるものではない
と言える。

 ベネマン農務長官は、第二審判決後の昨年12月18日、HACCPシステムを通じ
た食肉製品の安全性確保のため、今後もサルモネラ菌の検査を継続するとともに、
それ以外の検査結果なども基に、必要な条件を満たさない工場については今後も閉
鎖させる考えであることを明らかにした。

 具体的には、@サルモネラ菌検査に2回不合格となった段階で、FSISが当該
工場のHACCPシステムに関する詳細な調査を行い、改善すべき点を指摘する、
Aさらに病原性大腸菌O157やリステリア菌の検査なども組み合わせ、当該工場が
改善措置を講じた後もシステムに欠陥があると判断される場合に限り、食肉検査を
中止するとしている。

 また、HACCPシステムをはじめとする食品の安全性確保措置を強化するため、
科学的根拠に基づき、現行の関係規則の全面的な見直しを行うこと、工場において
HACCPシステムの実効性を調査する検査官を全国に増員配置すること、現在、
米国科学アカデミー(NAS)などが行っている食品の微生物学的検査基準に関す
る調査を促進していくことなども併せて明らかにされた。

 当初からサルモネラ菌検査の結果だけで工場が閉鎖されることに難色を示してい
た、食肉処理・加工業者の団体であるアメリカ食肉協会(AMI)は、こうした今
後のUSDAの取り組み姿勢を歓迎するとのコメントを出した。しかし、全国肉牛
生産者・牛肉協会(NCBA)や主要な消費者団体は、今回の判決によって食品の
安全性確保のための措置が緩和されることには反対するとの立場で、従前どおりの
措置を適用するよう求めている。また、議会でも、ハーキン上院農業委員会議長を
はじめとする民主党上院議員3名が、今回の判決で否定されたUSDAの権限を明
文化するための法案提出を行う構えを見せるなど、関係者の間では抵抗も大きい。


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