ALIC/WEEKLY


豪州乳業メーカーがNZの酪農生産者を勧誘へ


【シドニー駐在員 粂川 俊一 1月17日発】豪州の大手乳業メーカーボンラック
は、ニュージーランド(NZ)の酪農生産者を対象に豪州への移住を勧誘するキャ
ンペーンを開始する。同社は昨年、経営再建のためフォンテラ(旧ニュージーラン
ド・デイリー・ボード)と業務提携を行ったが、今回新たに、原料乳の安定確保を
図ることを目的に他国の酪農生産者にも供給源を求め、移住を働きかけるという取
り組みを始める。

 同社は、業績悪化に伴う財政難から原料乳の買入価格抑制を余儀なくされたため、
過去2年間で多くの原料乳供給者たる酪農生産者を失った。現在、同社の工場では
原料乳不足から処理能力を下回る処理量で稼動せざるを得ない状況となっていると
言われる。処理量を増やす方策として、失った酪農生産者を再び同社の傘下に収め
るのは困難と判断したため、タスマン海を隔てたNZの酪農生産者を勧誘する今回
のキャンペーンを開始することになったとされる。

 今回の取り組みは「酪農生産者リクルートキャンペーン」とも言え、具体的には
1月28日から1週間にわたってNZの北島において6ブロックで9回の説明会が開
催される。説明会では、豪州で酪農生産を始めるに当たって必要不可欠な銀行融資
の詳細、土地価格、乳牛価格などの情報をはじめ、生活費や教育問題のような一般
生活情報も提供する予定とされる。同社では特に、NZでシェアファーマーや酪農
場所有者として酪農を始めることを望んでいる若い人々にアピールすることを期待
している。

 また、既にNZで酪農に従事している生産者へは、豪州の土地価格がNZより安
いことなどから酪農場を設立するコストが安いということをアピールの主眼として
いる。

 さらに、同社は勧誘に当たって、質の高い正確な情報を提供することに重点を置
き、財政的なインセンティブは与えないとしている。人々が新しい場所に移住する
ことは重大な決定であることを理解しているが、このための準備を支援することを
通して良い関係を構築したいとしており、今回の勧誘の結果として、財政的な支出
をすることなく、原料乳供給を増やすことを期待している。同社のスタッフは、N
Zの酪農家が移住を決定するに当たり、NZのフォンテラが同社に25%出資してい
ることが移住を推進するものと確信している。

 同社へ原料乳を供給する酪農生産者が多く立地するビクトリア州の酪農生産者の
団体は、今回のキャンペーンに対して、国際価格が低下している時に処理量を増加
させる同社の努力には厳しい見方を示しつつも、おおむね歓迎の意を表している。
このキャンペーンにより、同州の熟練した酪農生産者の慢性的不足を解消するよう
な成果があるならば、前向きなことであるとしている。

 同様に、タスマニア州の酪農生産者団体でも、既に同州の酪農生産者の約1割は
90年代半ばに同じような勧誘によって移住してきた者であり、今後同州の生乳生産
量を増やす計画もあることから、好意的に受け止めているようだ。なお、NZの酪
農生産者団体でも反応は良好という。

 今回のキャンペーンは、同社とフォンテラの業務提携に伴い移籍したかつてのN
Z乳業界のスタッフが中心となって行われる模様である。その成果いかんによって
は、業務提携による同社の経営再建は、酪農生産者のNZから豪州への移住を伴う
ものに発展する可能性も生じてきた。


元のページに戻る