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【ブラッセル 山田 理 7月2日発】EUの牛乳・乳製品管理委員会は6月27日、 入札方式による6,664トンの脱脂粉乳 (SMP)の介入買い上げを承認した。入 札方式によるSMPの介入買い上げの実施は、91年以来、11年ぶりのことである。 EUでは、バターやSMPの介入買い上げなど乳製品に対する価格支持を実施し、 生乳価格を間接的に支持する仕組みとなっている。各国の介入買い上げ機関は、S MP生産の増加する期間(3月1日〜8月15日)に一定品質のSMPを介入価格 (205.52ユーロ/100kg(約24,457円:1ユーロ=119円)で買い上げ義務を有して いる。この場合の SMPの買い上げ限度数量はEU全体で年間109,000トンとさ れているが、限度数量を超えた場合には、残りの期間について入札方式による介入 買い上げに移行できることとなっている。 SMPの介入在庫量は2000年10月以降ゼロとなっていたが、2002年3月1日から は毎週5千トン前後の買い上げが開始され、5月中旬以降には週当たりの買い上げ 量が1万トン以上に増加した。6月中旬には、早くも年間買い上げ限度数量を突破 したため、通常の介入買い上げは6月15日に停止された。今回実施された第1回目 の入札方式による買い上げを含めると、2002年の介入買い上げ数量の累計は、92年 以降で最大となる13万5千トンに達している。 EUにおけるこうしたSMP需給の失調は、@SMPの域内生産の増加とA国際 競争力の相対的な低下によるSMPの輸出停滞がもたらしたものである。 2002年1〜3月のEUのSMP生産量は、前年同期比10.2%増の24万9千トンと 急増している。これは、生乳生産クオータの増枠や今年前半に良好な気候に恵まれ たことで生乳出荷量が増加(1〜4月:前年同期比1.0%増)した中で、チーズ生 産が伸び悩んでおり(1〜3月:同0.5%増)、全粉乳の生産も大幅に減少(1〜 3月:同15.7%減)していることから、結果としてSMP生産に仕向けられる生乳 が増加していることが要因となっている。 SMPの国際市況に目を向けてみると、国際的な経済の停滞により、SMP需要 は伸び悩んでいる。一方、供給面では、オセアニア諸国が生乳生産を増加させると ともに、価格競争力を武器に輸出を伸ばしている。また、東欧も輸出に向けた在庫 を抱えているといわれており、供給サイドの競争は激化している。 EUでは2001年11月以降、徐々にSMPに対する輸出補助金を増額しているが、 最近の為替相場のユーロ高基調による影響もあり、欧州産SMPの輸出競争力回復 に対する効果は限定的なものとなっている。7月以降は、米国の乳製品輸出奨励計 画(DEIP)によるSMP輸出の割当が再開されるなど、SMP輸出をめぐる環 境はさらに厳しさを増すとの見方もある。このため今後は、SMPの輸出量が多い ドイツやアイルランドなどを中心に、EU委員会に対し、輸出補助金のさらなる引 き上げを求める声が強まるものとみられている。
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