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【シドニー 粂川 俊一 7月11日発】ニュージーランド(NZ)乳業最大手フォ ンテラは7月1日、同社が株主として25%を所有し、メルボルンに拠点を置くボン ラックフーズと、メインランド、ティップトップなどの消費者向け乳製品会社を統 合し、新会社を設立することに合意したと発表した。この統合により設立される会 社はオーストララシアン・フード・ホールディングス社(Australasian Food Hol dings(Australia)Pty Ltd:AFHL)で、年間売上げ23億NZドル(約1,334 億円:1NZドル=58円)を超え、従業員約4千人が見込まれている。 ボンラックフーズは、2001年に現在のフォンテラの母体の1つとなった、ニュー ジーランド・デイリーボードとの業務提携を結んでおり、その一環として同社とフ ォンテラは既に持ち株比率50%ずつの消費者向け乳製品会社、ボンランドデイリー ズを持っているが、それもAFHLに吸収されることになる。 AFHLは、NZにおけるメインランド、ティップトップ、豪州におけるボンラ ンドデイリーズ、ピーターズ&ブラウンズの事業を1つにすることとなる。統合さ れるこれらの企業は、NZ・豪州両国で良く知られている10を超えるブランドを持 っている。 フォンテラは現在、統合される企業で株式の大多数を持っており、新会社におい ても75%の株式を所有し、その主導権を握るとみられている。なお、ボンラックの 持ち株比率は約11%とされる。 フォンテラのノーゲイト最高経営責任者は、この統合がオーストララシア(Aus tralasia:豪州・NZと近海の島々)の今後の成長のために強い基盤を造るととも に、同社の株主である酪農家に最大の価値を与えるという目的に寄与する非常に重 要な行動であり、統合された事業により、流通と販売における一層の強化が可能で あるとしている。また、豪州における同社の資産を強固にするために整理統合する ことは非常に優先順位の高いものであったため、同社とボンラックフーズのブラン ドを再編成することによって、年に1千万NZドル(約6億円)から2千万NZド ル(約12億円)の利益を上げると期待している。 ただし、AFHLによるフォンテラの株主への利益還元については、期待される 利益や75%の持ち株比率を前提にしても、わずかなものであり、株主への直接的で 経済的な利益という面よりも、フォンテラの戦略上の利益という面が強いようだ。 一方、ボンラックフーズのキャンベル会長は、同社にとっての利益は、財務体質 や事業運営上の地位を強化することにあるとしている。 また、ノーゲイト氏は最近の会議の席上、強い酪農乳業には強い「地元市場」 (home market)が必要であり、NZだけでは必要とされるベースが確保されない ため、豪州は同社の「地元市場」の一部であるとの考えを表明していた。 過去1年にわたってフォンテラは、中南米と北米を領域とするネスレとの合弁企 業の設立(「海外駐在員情報」4月9日号参照)など戦略上多くの業務提携を行っ ており、国際市場への躍進に加え、今回の統合により、自らの「地元市場」拡大の 地固めも行うこととなる。 なお、今回の事業統合により、フォンテラの豪州における同社の資産の整理統合 の一環として、同社が約18%を所有する豪州乳業大手ナショナルフーズの株式の売 却も選択肢の1つとみられている。
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