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ブラジル農務省、2002/03年度農業プランを発表


【ブエノスアイレス 犬塚 明伸 7月17日発】ブラジル農務省プラチニデモラエ
ス農相は2002/03年度の農業プランを発表した(なお、今回の発表は概略であり、
全体を詳細に網羅したプランは、後日公表される)。農業プランは、@農村に対す
る融資、A国家経済社会開発銀行の資金による投資プログラム、B投資プログラム
のまとめ(@およびAをまとめたもの)、C2002/03年度の各作物ごとの最低保証
価格の4項目からなる。

 ブラジルの農業政策は、融資がその大部分を占め、@〜Bはすべて融資の説明と
なっている。2002/03年度において生産者に提供される農業融資資金は、前年の147
億レアル(約6,027億円、1レアル=41円)を28.9%上回る189億5千万レアル(約
7,770億円)が準備され、期間内に返済された資金の再貸付けを合わせると融資総
額は前年比26.0%増の216億7千万レアル(約8,885億円)になる。なお、このうち
162億7千万円(約6,671億)が8.75%の固定金利で融資されることになっている。

 今回、畜産に関連した新規の融資プログラムとしては、農畜産品に対して付加価
値を求めアグロインダストリーの競争力向上を図る農協開発プログラム(融資枠2
億5千万レアル(約103億円)、1農協当たり2千万レアル(約8億円)、償還期
限12年、年利10.75%)、ブルセラ病および結核撲滅のため殺処分された家畜の補
充に対する購入融資プログラム(融資枠3千万レアル(約12億円)、限度額等は未
定)がある。このほか継続拡充されるものに、牛乳の冷却および輸送の近代化奨励
プログラム(新たに、サイロ建設が融資の対象)、劣化牧草地回復プログラム(新
たに、抜根、電気牧柵等が融資の対象)がある。

 また、直接の融資ではないが、養豚農家が食肉パッカー等から受け取った約束手
形または商業手形に対して、銀行が満期までの利子を差し引いて手形を買い取る割
引に低利の本農業融資の資金を活用することが認められた(なお、食肉パッカー等
は銀行に対し、利子を手形の割引と同時に支払い、額面金額は手形の支払い期限満
了時に支払う)。これは、@豚肉の生産増加に対し、国内消費および輸出が伴わず
供給過剰を招き価格が低下傾向で推移しつつあること、Aトウモロコシの供給量減
少による価格上昇、ドル高による大豆カスおよび輸入資材価格の上昇による生産コ
ストが増加していることで養豚経営が極めて困難な状況にあるため、養豚業界から
何らかの打開策を求める要請に政府が応えたものである。本措置により食肉パッカ
ー等が低利のコストで製品を貯蔵し、市況が良い時に出荷ができるとの考えから政
府は、「生産者のみならず、養豚部門全体から見れば、価格変動に対するリスクが
減じられている。」と述べている。

 この増額された農業プランを評価する声が聞かれる中、ブラジル農業連盟(CN
A)のサルヴォ会長は「融資額217億レアルは生産額が920億レアルに達する農畜産
業分野への融資としては、まだ不十分である。他の農業輸出国が生産者に提供する
金額よりはるかに小さい上、年間8.75%の固定金利は4%以下である国際金利の倍
以上である。CNAは250億レアル、固定金利5.75%を提案していた。」と不満を
表明している。

 また、生産者に対し一定の収入を保証する最低保証価格が改定され、特にトウモ
ロコシは州により最低価格は異なるものの、60キログラム当たり7.5〜10.5レアル
(約308〜431円)と約18%〜28%引き上げられた。さらに7月12日農務省は、トウ
モロコシのオプション契約(農業者が生産物を、事前に決められた日に決められた
価格で政府に販売する権利を農業者に与える契約で、市況の価格が政府との間で決
められた価格より高いときには、プレミアム(契約時に支払った契約金)の返還が
ないことを了承の上、市場へ販売することができる。)を500万トンとし、第1回
目の競売を7月19日に実施すると発表した。農相は「収穫期の市場価格を示し、生
産者の決断を支援することができる。特に輸出の増大により拡大しつつある養豚、
養鶏部門のトウモロコシの需要を満たすため生産を続けるよう奨励したい。」との
声明を出し、トウモロコシ増産に向けた施策を講じているところであるが、大豆生
産に関心がある生産者がどこまでこれらの取り組みに参加するか、今後注視される
ところである。


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