ALIC/WEEKLY
【シドニー 幸田 太 7月18日発】豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、シ ドニー先物取引所(SFE)での肉牛先物取引を今年8月13日から開始すると発表 した。MLAは、1998年から内部での検討を重ね、実に4年の歳月を費やして実現 にこぎつけた。 肉牛先物取引の概要は、以下のとおりとなる。 @ 取引は東部ヤングキャトル指標(EYCI)に基づき行われる。取引単位は、 枝肉重量5,000キログラム(約25頭:推計200kg/1頭)とする。 EYCIは、クインズランド州、ニューサウスウエールズ州およびビクトリア州 の26ヵ所で開設される生体現物市場(セールヤード)における16の個別取引カテゴ リーの加重平均価格である。また、この指標には生体重200キログラム以上の去勢、 未経産、若齢牛が含まれている。ちなみに現在、この情報は全国家畜調査サービス (NLRS)により提供されている。 A 取引限月は、年間6月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)が設けられ、 最長18ヵ月先までの契約が可能である。 B 決済は、同意された先物価格と契約終了時点の価格の差額について現金で行わ れる。 なお、電子化により、24時間の取引が可能とされている。 食肉業界はMLAを通じ、向こう5年間で100万豪ドル(約7,000万円:1豪ドル =70円)の投資を行い、取引の手数料収入による投資額の回収を見込んでいる。一 方、SFEは商品の掲示、精算、配当などこの市場に関する維持管理を行う。ML Aに加えて業界大手のウエストファーマーズ社、エルダース社等がスポンサーに名 を連ねている。 開設の背景として、より安定的な肉牛取引を求める業界関係者の声がある。豪州 の食肉産業は、フィードロットでの肉牛生産が増えてきているものの、草地での肉 牛生産が主体であり、それらの6割を輸出するという基本構造を有している。これ により、数年ごとの周期で訪れる干ばつや、輸出国の需給事情で幾度となく価格の 乱高下を招き、そのたびに生産者、フィードロット業者および食肉処理業者が翻弄 されている。 MLAによると現在、SFEにおいて、豪州産羊毛の生産量の約20%が取引され ており、肉牛先物市場においても今後セールヤードで生体現物取引される総頭数の 最低2%を取り扱うことを目標としたいとしている。 MLAのブルックス社長は、豪州における肉牛先物市場の開設は価格的にも効果 的な保険を牛肉業界にもたらすとその期待のほどを述べている。 今年に入り、豪州では肥育素牛の価格が昨年と比較し1キログラム当たり50豪セ ント(約35円)近くも下落しており、肉牛先物市場のメリットを容易に生かすこと ができるのは、素牛を導入してから半年以上肥育するフィードロット業界だと考え られている。しかし、フィードロットから出荷される最大の仕向け先は日本であり、 現在、日本への輸出が低調な状況で肉牛先物市場の取引が果たして活発化するか今 後に注目したい。
元のページに戻る