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【シンガポール 宮本 敏行 7月18日発】インドネシアでは、酪農分野への政府 による補助金の投入や海外からの援助によるてこ入れが進められている。政府はこ のほど、年末までに370億ルピア(約5億2千万円:100ルピア=1.4円)を投じて、 小規模の酪農家が乳牛を増頭するための酪農発展基金を創設すると発表した。これ は、政府が優先課題の一つとして掲げる畜産業を底辺で支える小規模農家への支援 プログラムであると同時に、酪農業における生産力の底上げを狙ったもので、急が れる同国の酪農業の基盤整備に資する事業として期待が寄せられている。 インドネシアでは従来、牛乳を飲む習慣は一般的でなかったものの、インドミル ク社をはじめとする地元乳業会社の創設やネスレ社の進出などにより、商業ベース での乳業の規模が拡大したことから乳牛の飼養頭数は増加傾向にある。2000年の乳 牛の飼養頭数は35万4千頭で、95年と比較すると3.8%増加している。肉牛が▲4.6 %(1,100万8千頭)、豚が▲30.6%(535万7千頭)、山羊・羊が▲1.7%(1,998 万3千頭)、ブロイラーが▲23.0%(5億3,087万羽)と他の畜種がいずれも5年 前より減少している中にあって、酪農部門が堅実に成長している様子がうかがえる。 一方、2000年の生乳生産量は、49万6千トンと経済危機以前の水準を上回り史上最 高を記録したものの、同年の1人当たりの牛乳・乳製品消費量(生乳換算)も6.5kg と過去最高を記録している。ただし、フィリピン(15.7kg)、タイ(19.5kg)、マ レーシア(33.2kg)といった他のアセアン主要国との比較では、目立って低い水準 にとどまっている。 インドネシアの酪農における問題点の一つは、優良繁殖牛の慢性的な不足や酪農 技術教育が充実していないことなどで酪農経営の規模拡大が進まないことにあり、 酪農家一戸当たりの平均飼養頭数は約3頭に過ぎない。政府によると、酪農発展基 金事業に参加する農家は、所属する酪農協同組合を通して6〜10頭の乳牛を導入で きるとしている。また、事業の一環として、インドネシア酪農協同組合連合(GK SI)により、散在する小規模酪農家の乳牛を地域ごとに集約し、各地に酪農セン ターを作るプログラムも進行している。このセンターは搾乳の効率を向上させるだ けではなく、将来的には乳製品工場を併設してそれぞれの地域に根ざした酪農・乳 業の育成をにらんだものとなっている。政府は、従来型の補助事業が小規模農家や 新生酪農ビジネスの発展にほとんど寄与してこなかったことを認めた上で、新たな 事業によって底辺の担い手達を国レベルの酪農システムの中に統合していくことの 重要性を強調している。なお、GKSIは、こうした地域酪農のインテグレーショ ンの試みを、酪農家が多く分布する西ジャワ州から始めたいとしている。 また、GKSIは、これらの動きと並行して、不足する飼料や乳牛飼養地確保の 観点から国と連携し、国有森林やプランテーションを有効に利用する方策もとり始 めた。すでに、国の機関である森林公社と土地の賃貸借契約を交わした酪農家も各 地に現れており、生産された飼料の収益の一部はGKSIにプールされ、新たな酪 農振興に仕向けられるという。 一方、インドネシアでは99年以降、米国の援助で学校給食用牛乳の事業を行って いる。また、米国はこのほど、インドネシアに対し、国家牛乳計画の対象となる貧 困家庭用に粉乳類3千トンの無償援助を行った。これらの援助は、将来的にもイン ドネシアの牛乳・乳製品需要の拡大につながるものであることから、同国の酪農業 の発展にとって、政府の各種施策と同様に欠かせないものとなっている。
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