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アルゼンチンで牧羊業の復興を図る制度が始動


【ブエノスアイレス 玉井 明雄 7月24日発】アルゼンチンでは2001年4月4日、
牧羊業の復興を図る制度を制定した牧羊業復興法(法律25422号)が採択された
が、今年6月18日付け官報にて本法の施行規則(大統領令1031/2002号)が公布
された。

 同法によると、この制度は、生体家畜、羊毛、羊肉、羊皮、羊乳、脂肪、精液、
受精卵などの生産を最終目的とした牧羊経営を対象に、羊群の再構成、生産物の
品質の向上、合理的な経営集約化、生産性の向上、粗放経営における適正な技術
の導入、農地の再整備、せん毛プロセスの改善、羊毛の格付け、衛生管理などの
活動や緊急事態下におかれた生産者を支援するものである。

 本制度の適用を受けるために、生産者(農業生産法人を含む。以下同じ)は、
前述の活動内容について、1年〜数年を実施期間とする作業または投資計画を策
定し、州の実施機関に提出する。州の実施機関による検討・承認の後、国の実施
機関であるアルゼンチン農牧水産食糧庁(SAGPyA)に提出され、最終的な
承認を受ける。

 国または州の実施機関により作業または投資計画の承認を受けた生産者は、次
の恩恵を受けることができる。@地域、経営規模などにより異なる有償または無
償の経済援助、A作業または投資計画の策定に必要な基礎的調査への融資および
同計画の実施段階におけるコンサルティング経費への補助、B生産者などが受講
する研修費への補助、C金融機関からの借入金の利子への補助など。

 制度の運営に当たり、SAGPyA長官は、国と州の間の調整役などを担う国
家コーディネーターを任命する。また、SAGPyA内に、牧羊業復興制度技術
諮問委員会(CAT)が設置される。委員長はSAGPyA長官が務め、委員会
は国家コーディネーターと次の委員により構成される。アルゼンチン国立農牧技
術院(INTA)、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)、SAG
PyAからそれぞれ代表1名、本制度参加州の代表各1名、参加州の生産者代表
各1名。6月18日付け官報にて公布された施行規則には、国および州の実施機関、
国家コーディネーター、CATの役割などが具体的に明記された。

 実施に当たっては、SAGPyAの管理下に、牧羊業復興基金(FRAO)が
設置され、同基金の財源は、10年間にわたり、国庫より毎年2千万ペソ(約6億4
千万円:1ペソ=約32円)を下限として充当されることになっている。

 FRAOの使途について、同法によると、SAGPyAは、@制度の普及・啓
発活動、市場調査の実施と同調査結果の生産者への提供、パタゴニア地域の牧羊
業振興策の実施、生産物の消費拡大キャンペーンなど牧羊業の復興に資する支援
活動に年間15%までを、A国、州、および市における制度の運営費(人件費、設
備費、交通費など)に年間3%までを、それぞれ充当できる。また、SAGPy
Aによると、B作業または投資計画の承認を受けた各州の生産者の支援に充当で
きる資金として、基金から@とAを除いた額が、SAGPyAの作成する基準に
基づき、各州ごとに配分されるとしている。

 また、同法では、緊急措置として、FRAOから年間50%までを、自然災害、
生産物価格の急落などで緊急事態下におかれ、経営の存続が困難となった生産者
の支援に充当できるとしている。この場合、SAGPyAが定める条件を満たせ
ば、各州の生産者は、作業または投資計画を提出することなしに、支援を受ける
ことができる。また、国家コーディネーターには、SAGPyAのポンデ畜産部
長が正式に任命された。同部長は、「アルゼンチンの政治的混乱などにより、同
法の採択から施行規則の制定まで、1年以上の歳月が費やされたものの、厳しい
経済情勢の中で、予算措置が図られ、制度が始動したことは評価できる。今後、
アルゼンチンの環境保全に配慮しつつ、同国の牧羊産業における生産性の向上や
生産物の高付加価値化に資するよう制度の推進を図っていきたい。」と述べてい
る。


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