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日本向け豪州産牛肉の販売促進活動を強化


【シドニー 粂川 俊一 7月25日発】豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)に
よれば、6月の日本への豪州産牛肉輸出量は、前年同月比28%減、前月比7%減
の19,652トン(船積み重量ベース)であった。輸出量は6月までの暦年累計で前
年同期比44%減、2001/02年度(7〜6月)では前年度比28%減の243,438トン
と、ここ10年で最も少ない記録となった。

 このような状況下、連邦政府のトラス農相は7月11日、低調な豪州産牛肉の日
本向け輸出を打開するため、連邦政府のプロモーションパッケージとして5百万
豪ドル(約3億3千万円:1豪ドル=65円)の支援を発表した。その使途はML
Aのマーケット回復キャンペーンとしており、生産者と食肉処理加工業者もそれ
ぞれ125万豪ドル(約8千万円)を拠出する。なお、同農相は、牛肉産業が主た
る産業として立地する州・準州政府にも資金拠出を求めている。

 米国向け牛肉割当枠配分の最終的な決定に際して、上院委員会はいくつかの勧
告を行ったが、この政府支援策は、その中の「米国と並ぶ重要な市場である日本
の販売促進を政府主導で推進すること」との勧告に従ったものとみられる。トラ
ス農相は、「牛肉産業は豪州の主要な輸出の担い手であるとともに、地方部にお
いては重要な雇用創出の場」であり、「通常は政府が販売促進のキャンペーンを
支援することはないが、需要が回復中の日本市場において豪州のシェアが米国な
どの競合国に奪われないようにするためには、このキャンペーンは重要な機会で
ある」としている。

 一方、MLAはこのパッケージとは別に、日本市場における全体的なマーケテ
ィング戦略の一つである今年度の対日輸出業者との合同の販売促進プログラムを
実施しているが、同プログラムに37業者が参加することを7月15日に明らかにし
た。このプログラムのために輸出業者からは4百万豪ドル(約2億6千万円)以
上の拠出が見込まれ、生産者団体から提供された約2百万豪ドル(約1億3千万
円)と合わせて使うことが計画されている。このプログラムは、日本市場におけ
る実行の規模と輸出業者からの支援のレベルにおいて「前例がない」ほど関心が
高いものとなっている。

 豪州の牛肉産業は、政府の5百万豪ドルのパッケージやMLAと輸出業者の合
同の販売促進プログラムを含め、今後12ヵ月間に日本市場で1千6百万豪ドル
(約10億円)以上を使うと見込まれている。

 MLAが実施している豪州産牛肉の販売促進キャンペーンについては昨年、日
本での牛海綿状脳症(BSE)発生を受け、3段階に分けた大規模なキャンペー
ン活動を計画し、2段階までは実施されたものの、多額の経費に見合う効果が疑
問視されたことや資金不足から、3段階目が取り止めになった経緯がある。

 このような状況を踏まえ、MLAは11月の年次総会で議論が予定されている家
畜生産者に対する課徴金値上げ案について、生産者から支持を得ようとしている。
この提案は豪州肉牛評議会(CCA)によって発議され、日本と韓国における販
売促進などに使用するための追加財源910万豪ドル(約6億円)の調達を目指し
て、肉牛取引課徴金(現行:3ドル50セント:約228円)を50セント(約33円)
値上げするものである。

 MLAのクロンビー会長は、「長期の戦略のために持続可能な財源を築くのと
同時に、連邦政府の5百万豪ドルのパッケージは豪州の肉牛産業が販売促進のキ
ャンペーンで日本における勢いを取り戻すことを可能にするであろう」としてい
るが、今後の販売促進活動の効果が課徴金値上げ論議を左右することにもなりそ
うだ。


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