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【シンガポール 小林 誠 7月25日発】ミャンマー畜水省は、外国種を用いた 3元交配の普及により、豚肉の生産性と品質の向上を図り、豚肉の輸出振興を行 う意向であることを公表した。民間では、すでに、地元資本のホンパン・グルー プが、中国雲南省に国境を接するシャン州に肉豚50万頭規模の養豚基地を建設・ 整備中で、2008年にはフル稼働の見込みだが、政府の取り組みは遅れていた。 ミャンマーでは、約380万頭の豚が飼養されているが、商業規模での生産はほ とんど行われておらず、少頭数を庭先で放し飼いするか、簡易施設で飼養する方 式が中心であり、生産費に占める飼料費の割合が8割を超えるとされている。こ のような状況ではあるが、同国は、トウモロコシや油かす類などの飼料資源が豊 富なため、豚肉の生産費は中国の半分程度とされており、中国の世界貿易機関 (WTO)加盟にともなう輸出機会の拡大に対する期待が高まっている。 畜水省では、家畜改良・獣医局と牛乳・飼料公社が養豚関連の行政を担当して おり、それぞれが種豚場を保有している。公社の種豚場では、タイを本拠とする チャロン・ポカパン社(CP)の現地法人であるミャンマーCP社から寄贈され た原種豚を飼養しており、ランドレース、大ヨークシャー、デュロックの3元交 配を行い、肥育用素豚として外部に販売している。しかし、公社による肥育用素 豚販売は、退役軍人や退職公務員を対象とした福利厚生的な性格を有しており、 一般農家での養豚振興とは直接結びついていない。 一方、今回の家畜改良・獣医局による3元交配の普及推進意向表明は、一般農 家を対象に輸出向け豚肉生産を振興し、農家の所得向上を目指したものとなって いる。 同局の、ヤンゴン市内にある種豚場では、1999年に日本と豪州から輸入された ランドレース、大ヨークシャー、デュロックの3品種の種豚を維持・増殖してい る。この種豚場で生産された豚は、ヤンゴン市の北西約170km、バゴー管区ダイ ク町に設置されている、同局の養豚場で3元交配され、農家へ供給される。同局 によれば、ダイク養豚場は、現在のところ国内最大規模の施設であり、収容規模 は1万8千頭、年間560トンの豚肉生産能力と同1万頭の肥育用素豚供給能力を有 している。 同国の年間1人当たりの豚肉消費量は、2.4キログラムとなっており、日本の 同17.2キログラムに比較してもきわめて低い水準にある。同国では、豚肉は、鶏 肉の次に好まれており、重要なたんぱく源とされているが、長引く経済不振によ り国民の購買力が高まらず、需要が伸び悩んでいる。政府は、特にシャン州など ケシの栽培地帯に畜産を導入し、ケシに代わる農家の現金収入源として養豚を振 興したい考えだが、国内の購買力不足から、生産しても販売先の確保が難しいと いう事情を抱えていた。家畜改良・獣医局では、中国への輸出によりこの問題が 解決できるとみており、今月中にも雲南省の援助による国境検疫所の改善計画を まとめ、畜産物の輸出拡大に向けた体制整備を進める意向である。一方、同局の 意気込みとは裏腹に、と畜場や食肉処理場は未整備で、衛生条件は必ずしも十分 とは言えない状況にあり、豚肉輸出の障害となることが懸念されている。
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