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米大手食肉パッカー、牛ひき肉を自主回収へ(米)


【ワシントン 道免 昭仁 7月25日発】米農務省食品安全検査局(FSIS)
は7月19日、大手食肉パッカーであるコナグラ社が腸管出血性大腸菌O-157に汚
染された疑いがある約1,900万ポンド(約9千トン)のグラウンドビーフ(牛ひ
き肉)などを自主回収すると発表した。ベネマン農務長官は会見の中で、自主回
収量が過去2番目の水準となったのは、予防的見地に立った慎重な対応の結果と
述べるとともに、牛ひき肉を原料としたハンバーガーパティを調理する際は、パ
ティ中心部の温度が華氏160度(摂氏約71度)以上になるよう十分な加熱処理が
必要と注意を喚起した。

 自主回収の発端は、6月中旬にFSISが行ったコロラド州の卸売業者に対す
る食肉サンプリング検査において、O-157が検出され、この製品がコナグラ社の
コロラド州の工場で製造されたものと判明したことによる。このため同社は、対
象製品を特定し、これらを自主回収することとした。これを受け、FSISは6
月30日、同社が5月31日に製造した35万4千ポンド(約160トン)のグラウンドビ
ーフの自主回収を行うと発表した。しかしながら、その後コロラド州などの6州
で発生したO-157によるとみられる食中毒は同工場の製品が原因であると米疾病
対策予防センター(CDC)が発表したことから、同社は、予防的見地と安全性
に対する姿勢を表すため、4月12日から7月11日の間に製造されたグラウンドビ
ーフとビーフトリミング(牛ひき材)の一部を回収対象に追加し、今回2度目の
自主回収の発表が行われたものである。

 FSISは96年に食肉等の安全性を向上させるため、危害分析重要管理点監査
(HACCP)システム導入の食肉等製造施設に対する義務付け(96年に規則改
定)などにより、O-157やサルモネラ菌などによる食中毒の防止を図っている。
結果として食中毒の発生件数は減少傾向にあるものの、O-157の発生件数は年間
約6万件に上る。

 なお、FSISは食中毒などが発生した際の製品回収の手続きについて、次の
ように定めている。今回のコナグラ社に対する回収のランクは、対象製品が腸管
出血性大腸菌O-157に関連したものであることから後述のクラスTが適用されて
いる。

1 食肉等製造施設は、製造過程において病原菌が混入した疑いなどがある場合、
 HACCPシステムに基づき、発生場所や対象製品の特定を行うとともに、F
 SISに連絡する。FSISは連邦食肉検査法(FMIA)に基づき病原菌の
 有無などを検査する。 

2 FSISは検査結果などを基に、FSIS内の各部代表をメンバーとするリ
 コール委員会で製品回収のランク付けを次のとおり行う。

 ・ クラスT:当該食品の摂取により深刻な病状を呈す、または死亡する可能
  性がある場合(食肉では、加熱前の牛ひき肉内からO-157が検出された時や、
  調理済み製品からリステリア菌が検出された場合など)

 ・ クラスU:当該食品の摂取により健康を害する可能性がある場合(例えば、
  ソーセージの成分表示にアレルギー症状を引き起こす可能性のある原料が入
  っているとの注記がなかった場合)

 ・ クラスV:当該食品を摂取しても、健康を害することはないが、連邦規則
  に基づく適切な成分表示がされていなかった場合

  また、FSISは製品回収を消費者、小売業者、卸売業者のどの範囲までと
 するかも検討する。

3 これらの結果を踏まえ、当該施設は、対象期間と製造番号などの特定などを
 行うとともに、FSISに自主回収のプランを提出する。(回収に係るコスト
 などすべて当該施設が負担)

4 これを受けFSISは、プランに基づき、施設名、対象期間、製造番号など
 をプレスリリースなどにより公表するとともに、適切な食肉の取扱方法などを
 周知する。


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