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供給過剰によりブロイラー価格が下落(ブラジル)


【ブエノスアイレス 玉井 明雄 5月30日発】ブラジルブロイラー用ひな生産
者協会(APINCO)によると、2001年1〜12月の鶏肉生産量(骨付きベース。
以下同じ)は、海外需要の増加などから生産意欲が高まり、前年比9.8%増の656
万7千トンと過去最大となった。こうした傾向は今年に入っても引き続き、2002年
第1四半期(1〜3月)の鶏肉生産量は、前年同期比14.5%増の174万4千トンとな
った。これを月別に見ると、3月は前年同月比17.8%の62万トンとなり、月間生産
量では過去最大となった。

 しかし、消費者の購買力が低下する中、輸出需要を当て込んだ生産増が急ピッ
チで進んだことから、需給のバランスが崩れ、ブロイラー生産者価格が下落した。
パウリスタ養鶏協会(APA)の統計によると、サンパウロ州における生体1kg
当たりのブロイラー生産者価格は、1月の1.12レアル(約55円:1レアル=約49円)
から3月は0.97レアル(約48円)、4月はさらに下落し、0.89レアル(約44円)と
なった。また、ブロイラーの主要飼料であるトウモロコシや大豆粕の価格上昇な
どから、2002年1〜4月のブロイラー生産コストは、前年同期比19.5%高の0.98
レアル(約48円)となり、月別に見ると、3月と4月は生産コストが生産者価格を
上回った。国内需要が低迷する中、飼料価格の上昇によるコスト増加分を生産者
価格に転化することは困難とされ、生産量の増加傾向が今後も続けば、養鶏部門
の収益性はさらに悪化するものとみられる。

 一方、ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)が発表した輸出動向によると、
2002年1〜3月の鶏肉輸出量(骨付きベース。以下同じ)は、前年比18%増の32万
2千トン、同輸出額(FOBベース。以下同じ)は、11%増の3億1,170万ドル(約
383億4千万円:1ドル=約123円)となったものの、1トン当たりの平均輸出価格
は、5.5%安の968ドル(約11万9千円)となった。また、4月の輸出量は、3%増の
10万3千トンと前年同期をかろうじて上回ったが、輸出額は、13%減の9,290万ドル
(約114億3千万円)、平均輸出価格は15.5%安の902ドル(約11万1千円)となっ
た。こうした輸出価格の下落要因としては、輸出市場へのブラジル産鶏肉の供給量
が増加したことに加え、欧州において牛海綿状脳症(BSE)問題で減退していた
牛肉需要が回復傾向にあることなどを挙げている。

 サンタカタリナ州農業経済企画院(ICEPA)の報告書によると、2002年の鶏
肉需給について、生産量は前年比9.6%増の720万トンと予測しているが、需給の
バランスを保つには、輸出量が10〜15%、国内消費量が6.0〜8.0%の増加が必要
であるとしている。しかし、生産は増加傾向にあるものの、消費者の購買力は低
く、昨年の輸出市場は活況を呈したが、最盛期は過ぎている。国際市場における
鶏肉在庫は増加し、国内のスーパーも鶏肉を客引きの目玉商品に使っている。

 こうした状況の中、同報告書によると、ブラジル鶏肉業界では、生産調整の話
し合いが始まっており、同国の鶏肉主要生産州であるパラナ州の生産者団体は、
すでに生産調整に着手しているとしている。また、欧州における牛肉需要の回復
傾向などの影響で輸出市場に昨年のような勢いはないものの、ABEFの統計で
は、2002年第1四半期のロシア向けは約2.7倍の3万トンと急増しており、同期に
限って見れば、ロシアは、サウジアラビア、日本に続く第3番目の輸出先となっ
ている。需給バランスの安定が望まれる中、鶏肉業界による生産調整への対応や
ロシアなど新興市場向け輸出拡大が今後の需給動向にどのような影響を及ぼすか
注目されるところである。



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