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EU委、GM作物の混入等に関する報告書を公表


【ブラッセル 山田 理 5月30日発】EU委員会の調査研究部門である共同
研究センター(JRC)は5月22日、農業総局からの委託に基づき取りまとめ
ていた「欧州農業における遺伝子組み換え(GM)作物、通常農法による作物
および有機作物の共存(co-existence)に関するシナリオ」と題するレポート
を公表した。

 EUでは、GM作物の新規認可が事実上凍結され、現在、GM作物に関する
新たなEU規則の検討が進められている。非GM作物の中に偶発的に混入する
GM作物の許容率設定が焦点の1つとなっており、このレポートでは、検討さ
れている混入許容率の実現可能性を農業手法および経済性の両面から考察して
いる。その概要は、以下のとおり。

(前提条件)
 油糧種子作物であるアブラナ、飼料用メイズおよび食用ジャガイモの3つの
作物を対象に、現在EU内でみられる一般的な農法・作付けパターンを網羅す
るように複数の農家タイプが設定された。また、地域内のGM作物のシェアに
ついて、2つのシナリオ(10%および50%)が想定された。

(GM作物の偶発的混入率)
 非GM作物におけるGM作物の偶発的混入率は、地域のGM作物シェアに基
づき設定された2つのシナリオ間で、劇的な変化は認められなかった。一方、
作物や農家タイプ間では、有意な分散が認められた(通常農法のメイズ栽培:
2.2%、有機農法のジャガイモ栽培:0.1%)。一般的に、すでに分離システム
が導入されているため、一部の例外を除き、有機農法におけるGM作物の混入
率はより低く推定される傾向がある。

(一定の割合以下への偶発的混入率の低減)
 種子生産で0.3%、食料・飼料生産で1.0%の混入許容率は、すべての農家タ
イプにおけるアブラナ栽培および通常農法でのメイズ栽培に関して、現行の農
業手法を変更することで達成可能である。しかし、農家個別での農業手法の変
更だけでは十分でない場合もあり、GM作物と非GM作物で開花時期をずらす
など、近隣の農家との協調が必要な場合も想定される。

 対照的に、すべての農家タイプにおけるジャガイモ栽培および有機農法にお
けるメイズ栽培では、現行の農業手法で、混入許容率を満たすことが可能であ
る。

(偶発的混入の排除)
 すべての作物について、検出限界に近い0.1%の混入許容率を達成できるかに
ついても検討した。これは、GM作物の使用が認められていない有機農家(検
出限界が事実上の混入許容値となっている)の状況に影響する。2つのシナリ
オの中で、作物・農家タイプのどのような組み合わせでも、0.1%の混入許容率
を満たすのは非常に困難であると結論付けられた。
 
(混入率低減に要するコスト)
 種子生産で0.3%、食料・飼料生産で1.0%の混入許容率を達成するための農業
手法の変更およびモニタリングシステムの導入などにより、作物価格の1〜10%
に当たるコストが増加する。モニタリングがコスト増加の大部分を占めるが、G
M検出テストの費用低下などにより、コスト削減は可能であるとみられる。

(同一地域内での異なった農法の共存)
 (その可能性については、)各作物について事例ごとに検討する必要があるが、
想定したどのシナリオにおいても、地域内で0.1%の混入許容率を達成するのは
事実上不可能である。種子生産で0.3%、食料・飼料生産で1.0%の混入許容率の
達成は、技術的には可能であるが、コストや作業手法等の変更の複雑さから、経
済的に見ると困難を伴う。この傾向は、アブラナ栽培に顕著にみられる。

(同一農場内での異なった農法の共存)
 同一農場でのGM作物の栽培と通常農法または有機農法による非GM作物の栽
培を同時に行うことは、大規模農場であっても、非現実的なシナリオかもしれな
い。(自生作物の管理が重要である)アブラナ栽培では、非GM栽培農家は、G
M作物の混入を避けるため、同一農場内でのGM作物の栽培を行わないだろう。
また、メイズやジャガイモでも、その場合は作物の取り扱いがかなり難しくなる
だろう。



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