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連邦農業予算は検疫体制強化を継続(豪州)


【シドニー 粂川 俊一 5月30日発】豪州連邦政府は5月中旬、2002/03年度
(7〜6月)の予算案を発表した。国内総生産(GDP)成長率3.75%の経済
見通しの下、テロ対策や国境警備強化などの防衛予算が増強された一方、障害
者手当の受給資格の厳格化など福祉サービスが後退したとして野党から批判を
浴びている。

 その中で、農業関連予算は、従来からの方針を踏襲した形で、検疫と食品産
業対策に重点を置いたものとなっている。

 検疫対策関係では、まず、昨年度からの輸入検疫検査体制の強化などに加え、
重大な家畜伝染病発生における緊急対応体制を増強するため、4年間にわたっ
て1千万豪ドル(7億円:1豪ドル=70円)が計上される。この内容としては、
@疫学上重要な地域と、病気発生を予防かつ制御するより良い方法を見出すた
めの緊急時の管理に要する人員の確保、A病気の迅速な確認を支援するための
豪州動物衛生研究所(AAHL)の診断システムの自動化、B州・準州政府と
の協力による新しい情報システムの開発などが挙げられている。なお、この一
環として今年9月に口蹄疫発生を想定した模擬演習を実施することとなってい
る(海外駐在員情報4月30日号参照)。

 第2に、北部豪州検疫戦略(NAQS)のために4年間にわたって1千690
万豪ドル(約12億円)。これは北部豪州とパプアニューギニアやインドネシア、
東ティモールに近接する地域の防疫体制を強化するもの。

 第3に、検疫体制強化を補完する施策として、政府獣医師奨学金のために単
年度2百万豪ドル(1億4千万円)。これは、農村地域における大動物の健康
を専門に扱う獣医師の減少に取り組むためのもので、奨学金は学業成績が確実
な農村地域で生活し働く希望を持つ3学年の獣医学生が対象となる予定。なお、
併せて政府は家畜産業界と合同で農村地域で働く獣医師が増えない要因を検討
することを開始することとしている。

 食品産業対策については、すでに昨年9月末に発表されていた全国食品産業
戦略(NFIS)に対して5年間で1億240万豪ドル(約72億円)を計上。この
戦略は従前のアジア地域への食品輸出振興対策に代わるもので、食品加工部門の
競争力強化を目的とし、@戦略を監督する高いレベルの産業評議会の設立、A豪
州をベースとする会社に優れたイノベーション実行の手段を与えることを目指す
4千7百万豪ドル(約33億円)のパッケージ、B市場アクセスや貿易の開発・推
進に焦点を当てた国際市場への参入アプローチを発展させ実行するための食品貿
易のイニシアティブの確立、C競争力のある供給チェーンの確立や国家的な食品
の安全性と品質の向上のための戦略などを内容とする。最終的には、豪州の農産
物が原材料としてだけではなくより加工度を高めた付加価値の高い製品として輸
出されることを目指している。

 そのほか、畜産関係では来年の牛肉博覧会開催関係の経費などが予算計上され
ている。

 農業関連予算に対して、野党は従前の古いアイデアの焼き直しに過ぎないと批
判的であるが、全国農業者連盟(NFF)のドンジス会長は、防衛予算が増加し
た背景に理解を示しつつ、「同様に農業のための国境防衛は非常に重要な問題で
ある」とおおむね満足の意を表している。



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