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【ブエノスアイレス 玉井 明雄 6月12日発】チリ家畜衛生当局は5月29日、国 際獣疫事務局(OIE)に対し、同国中部の種鶏場において鳥インフルエンザ発生 の疑いがある旨を通報したが、米国における検査により、鳥インフルエンザウイル スの存在が確認された。 OIEが5月30日に受けた通報によると、チリ農業省農牧庁(SAG)は、同国 中部の第5州サン・アントニオ県において、雌鶏の死亡率が通常より高い種鶏場が 確認されたことから、この農場を隔離するとともに、農場から半径10kmを衛生管 理地域に指定した。SAGの中央研究所で血清学検査を実施したところ、鳥インフ ルエンザ感染の可能性を示す結果が得られたことから、サンプルを米国アイオワ州 にあるOIEレファレンス研究所へ送付した。同通報によると、チリでは、これま でに鳥インフルエンザの抗体陽性反応が確認されたことはなく、2000年1月から現 在までに7万件以上の血清学検査が実施されたが、結果はすべて陰性であったとし ている。なお、チリは、貿易相手国に対しても鳥インフルエンザ発生の疑いがある 旨を通知した。 さらに、OIEが6月6日に受けた通報によると、OIEレファレンス研究所に おける検査により、低病原性の鳥インフルエンザウイルス血清亜型H7N3である ことが確認された。疾病のまん延防止策として、発生農場の雌鶏43万羽のすべてを 対象にと畜処分された。感染源については調査中である。また、同通報によると、 第5州に隣接する第6州の種鶏場でも雌鶏に低い割合で、鳥インフルエンザの抗体 陽性反応が確認された。しかし、臨床症状は示していないとしている。 SAGが2001年12月にまとめた報告書によると、家きん産業のインテグレーショ ン化が進むチリでは、ブロイラー生産量のうち約90%が、アグロスぺル社、アリス ティア社、ドン・ポジョ社、アグリコラ・タラパカ社の4社で占められる。また、 七面鳥については、生産量の約95%が、ソプラバル社とアリスティア社の2社で占め られる。また、これらの企業のほとんどは、チリ中部の第5州、第6州、および首 都圏州に位置しているとしている。 チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)の統計によると、2001年における家 きん肉の生産量(骨付きベース。以下同じ)は48万5千トンで、うちブロイラーが 40万8千トン(シェア84.1%)、七面鳥が7万トン(同14.4%)などとなっている。 一方、家きん肉貿易を見ると、輸出量は2万8千トン、輸出額(FOBベース)は 3,800万ドル(約47億9千万円:1ドル=約126円)となっている。主要輸出相手先 は、メキシコ、中国、EUなどであり、輸出量を国別に見ると、メキシコ向けが9, 625トン、中国向けが6,970トン、イギリス向けが2,431トンなどとなっている。な お、2001年における家きん肉の日本向け輸出実績はない。 チリにおける鳥インフルエンザ問題への近隣諸国の対応としては、アルゼンチン 家畜衛生当局が6月4日、チリ産の家きん肉等の輸入を停止した。また、チリの現 地紙は、ペルー、ボリビアも同様の措置を講じたと伝えている。なお、日本向けに 輸出される家きん肉等については、チリ家畜衛生当局が5月30日、鳥インフルエン ザ発生の疑いにより、輸出検疫証明書の発行を停止している。
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