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【シドニー 幸田 太 2002年6月20日発】生産性委員会は(Productivity Commission) 6月12日、口蹄疫発生時の影響報告書を発表した。これによると、豪州国内で口蹄 疫が発生した場合その経済的な影響は、期間にして8年間以上、輸出利益を90億豪 ドル(約6,300億円:1豪ドル=70円)以上減少させ、国内総生産額(GDP)を 80億豪ドル(約5,600億円)から130億豪ドル(約9兆1千億円)減少させるという 大きな影響を与える内容となっている。 今回の調査報告を作成した生産性委員会は、各産業に対し調査、助言を行う連邦 政府の独立機関である。本調査は、大蔵省からの要請に基づいて行われた。 その報告は、添付資料も含めて200頁を超えるものとなっており口蹄疫の発生か ら根絶までを肉牛産業だけでなく養豚、羊牧、地域経済、環境、輸出、防疫などマ クロ経済への波及とその影響額を含め3種類のシミュレーションに基づいてまとめ たものとなっている。 ・ 小規模発生:発生から根絶までに要する期間3ヵ月、小麦と羊牧の主要地域で ある西オーストラリア(WA)州において3万8千頭の羊を殺処分 ・ 中規模発生:発生から根絶までに要する期間6ヵ月、クインズランド(QLD) 州の北部で肉牛から発生し、同州中部、北部準州へと伝播、5万頭を殺処分 ・ 大規模発生:発生から根絶までに要する期間12ヵ月、ニューサウスウエールズ (NSW)州南部で肉牛、乳牛、豚、羊から発生、ビクトリア(VIQ)州西部、 南オーストラリア(SA)州東部へ拡散、75万頭を殺処分 生産性委員会の推計では、口蹄疫の管理と撲滅のためのコストは、小規模発生の 場合、3千万豪ドル(約21億円)、中規模発生が1億5千万豪ドル(約105億円)、 大規模発生が4億2千万豪ドル(約294億円)、そのほか補償等にそれぞれ400万豪 ドル(約2億8千万円)、1,900万豪ドル(約13億3千万円)4,100万豪ドル(約28 億7千万円)が必要と試算された。 また、輸出に係る影響は、牛肉ではその輸出量の85%、羊肉では40%を現在口蹄 疫清浄国に輸出しているが、口蹄疫の発生により、それらマーケットを失うことの みならず、非清浄国への輸出も閉ざされるとしており、大規模発生の場合、年間で 94億8千万豪ドル(約6,636億円)の損失が出ると試算された。さらに、輸出依存 型であるこれらの産業における海外輸出マーケットが閉ざされたことで、余剰生産 が発生し、国内市場も一気に下落することが想定されており、国内における損失額 は、大規模発生の場合、年間33億3,200万豪ドル(約2,334億円)となり、畜産業界 の輸出、国内マーケット合計で年間128億1,200万豪ドル(約8,970億円)となりそ の影響の深刻さが顕著に表れている。 州別に見ると、家畜の総飼養頭数が最も多く特に肉牛飼養頭数では豪州全体の5 割を占めるQLD州で50億豪ドル(約3,500億円)の損失とされている。 今回の推計では、産業全体の損失を軽減させる策として、口蹄疫発生地域を限定 (ゾーニング)し、それ以外の地域を非汚染地域とし、継続的に輸出を可能とする ことが掲げられているが、輸出相手国側からの合意が得られるか実際的な問題が残 されている。
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