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口蹄疫発生が大きく響いた亜国の牛肉需給


【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 2月28日発】アルゼンチンの肉牛飼養頭
数は、94年以降減少基調で推移しているが、2001年の推定値は、2000年の4,867万
頭を若干上回り4,885万頭になると農牧水産食糧庁は発表した。

 牛と畜頭数は2000年が1,240万頭、2001年は1,144万頭と約96万頭減少し、枝肉生
産量はそれぞれ272万トン、246万トンと約26万トン減少した。2001年の枝肉生産量
の減少要因は、2001年3月の口蹄疫発生のため、EU、北米自由貿易協定地域(NAFTA)、
チリ、イスラエルなどの主要な輸出市場が閉ざされ、全体として去勢牛のと畜頭数
が減り、特に輸出向けの比較的重い去勢牛のと畜割合が減ったことにより、2001年
の平均枝肉重量が前年を下回ったからである。

 また、と畜頭数の減少要因を更に詳しく見てみると、近年の飼養頭数減少に加え、
@一部の生産者が輸出解禁後の高値を期待し家畜を保留したこと、A従来、輸出に
向けられていた重い去勢牛は国内向けでは買い叩かれるため、生産者が出荷を手控
えたことなどが考えられている。

 2001年の牛肉輸出量は、国内での口蹄疫発生により、同年4月以降主要な輸出市
場が閉ざされたため、前年の34万トンから15万トンに大きく下落した(枝肉ベース)。
特にEU向け高級牛肉枠(ヒルトン枠)は、前年の約26,000トンを大きく下回り5,4
00トン(製品ベース)となり、FOB輸出価格も前年の1kg当たり7.2ドル(約965円:
1ドル=134円)から同5.2ドル(約697円)に下落した。また、生鮮肉も前年の13万
トンから4万トンに激減した。しかしながら、本年2月1日からEU、続いてイスラエ
ル市場が解禁となった。また、解禁当初ウイルス活性が消えていないという理由で
除外されていたコルドバ州を含む3州も3月中には、輸出できる見込みである。なお、
現時点において、チリ、ロシアの解禁は先になる見込みである。

 国内の生体価格の指標となるリニエルス家畜市場の去勢牛生体価格の近年の推移
を見ると、2000年は1kg当たり0.76〜0.92ペソ(約47〜57円:1ペソ=62円)と前年
を上回って推移し、2001年前半は同0.85ペソ(約53円)前後であったが徐々に下落
し、年末には同0.64ペソ(約40円)と史上最安値を記録した。これは、@口蹄疫の
発生で4月以降主要な輸出市場が閉ざされたこと、A2001年後半の長雨による大規
模な浸水のため、生産者が未仕上げの肉牛の出荷を急いだこと、B長期にわたるア
ルゼンチンの経済不況の影響で、代金決済の遅い庭先取引を生産者が嫌ったことな
どにより、リニエルス家畜市場の上場頭数が増加したことによると考えられている。

 2002年1月の同市場の去勢牛生体価格は、1kg当たり0.75ペソ(約47円)と持ち直
し現在に至っている。2001年末からの経済危機の影響で、生産者が先行き不透明な
市場価格を敬遠し市場への出荷を控えたこと、牛肉の国内消費が落ちなかったこと
などが価格の上昇要因とされている。

 なお、輸出用と考えられる肉用牛の生体取引価格は、2001年の平均が1kg当たり0.
78ドル(約104円)であったが、今後は通貨切り下げの影響で0.45〜0.55ドル(約60
〜74円)で推移すると見られており、特に0.45ドルは世界的に輸出競争力の強い価
格だと業界関係者は考えているようだ。


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