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【シドニー駐在員 粂川 俊一 2月28日発】豪州における今後の家畜個体識別に ついて議論するための会議が2月19日、シドニーで開催された。この会議は、州・ 連邦政府農業担当部局の責任者および食肉関係業界団体の代表者によるもので、義 務的な全国家畜個体識別制度(NLIS)の完全な実行に向けた次のステップをめ ぐる議論の場となった。 99年から生産者の任意参加という形で実施されたNLISは、当初の導入目的か らEU輸出向けに限り義務化していたが、昨年末、ビクトリア(VIC)州におい て今年1月1日以降生まれた牛について、生まれた農場を離れる前に耳標を装着す ることなどが義務化された(子牛肉用など生まれた農場から直接食肉処理施設に出 荷される牛については免除)。 この会議において、生産者団体の1つである豪州肉牛協議会(CCA)のアダム ス理事長が、仮に肉牛・牛肉産業が義務化により NLISを実行するべきである なら、連邦と州政府の財政支援の有無が局面を左右する重大なものになると発言し ている。 同氏は、VIC州政府が、当初の100万個の電子耳標を無料配布し、その後も補 助により市場価格より約1豪ドル(約69円)低い2.5豪ドル(約173円)/個で生産 者に提供し続け、食肉処理施設においても読み取り装置に補助を行っており、この ようなVIC州の義務化へ向けた取り組みを模範的な前例として挙げた。NLIS のようなプログラムの実行のためには、電子耳標を用いた個体識別装置やそのほか 基本的な機器・施設が必要であり、政府は特に生産者に対する財政支援の役割を担 うべきであるとしている。 また、同氏は、生産者が義務的にNLISを実行する上で継続的に経費を負担し なければならないことに留意すべきであり、子牛が生産されるたびに必要とされる 電子耳標が生産者に与えられるべきであるとしている。対照的に、食肉処理加工業 者のための機器・施設の取得費用は、立ち上げ段階では重要であるものの、その後 はデータの集積が主体となる。CCAとしては、立ち上げ段階のみならず、中間実 行段階においても、経費を必要とする生産者のために、重要な支援を求めていくと している。 さらに、高まる食品安全性問題だけでなく貿易に関連する問題でもあるため、政 府は正当に関与すべきであると政府の積極的な関与を求めた。 一方、食肉団体の1つである豪州食肉協議会(AMC)の代表、ハッチンソン氏 は、NLISを義務化するに当たっては、強力な財政支援がない限り、生産者がそ のシステムを採用しない可能性は高いとしている。AMCは現在、NLISの実行 計画を強力に推進する一方、データベースの安全確保や情報検索などの問題を再調 査しており、今のところ問題はないものの、諸問題が解決されるまで、義務化の実 行に局面を前進させるつもりはないと発言しており、他の食肉団体である全国食肉 連合(NMA)も同様の意見という。 ただし、AMCの今後の展望としては、世界的に牛海綿状脳症(BSE)や口蹄 疫などの問題が散見していることから、義務的な家畜の個体識別プログラムに対し て迅速な対応が行われる可能性が高いとしている。 生産者、食肉業者ともにNLISの義務化については、食品安全性はもちろんの こと、輸出依存度が高い牛肉の今後の輸出相手国のニーズに対する対応を含め、総 論的には前向きであるが、初度経費やランニングコストに対する何らかの財政支援 が必要としている。しかしながら連邦政府はNLISの義務化については、昨年、 経費負担の観点から難色を示していたことから、連邦政府の今後の対応が注目され る。
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