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米国農産物輸出、2002年度は微増の見込み


【ワシントン駐在員 樋口 英俊 2月28日発】米農務省(USDA)は2月21日、
2002年度(2001年10月〜2002年9月)における農産物貿易見通しを発表した。これ
によれば、全体の輸出額は前年度比3.2%増の545億ドル(7兆3,030億円:1ドル=
134円)で、前回発表時(昨年11月)から変更はなかったものの、輸入額について
は約10億ドル(約1,340億円)引き上げられ、前年度比2.6%増の400億ドル(約5兆
3,600億円)と予想されている。輸入額が引き上げられたのは、米ドル高の継続と
米国経済の回復に伴う消費者の支出増が見込まれるためである。

 畜産物の輸出額については、豚肉、家きん肉製品および牛皮などの増加見込みに
より、前回の予測値から2億5千万ドル(約335億円)引き上げられ、ほぼ前年並
みの127億ドル(約1兆7,018億円)と予想されている。

 豚肉の輸出は、史上最高の15億ドル(2,010億円)に達すると予測されているが、
これには牛肉の代替需要の強い日本向けの伸びが寄与するものと見られる。米国の
豚肉輸出増は、肥育豚販売価格にもプラスの影響を与えており、ミズーリ大学のグ
リムス教授の研究によれば、2001年(暦年)は、輸出額の増加が一頭当たり6.03ド
ル(約808円)の追加的な価値を与えたと試算されている。一方、米国産豚肉は、
ロシア、メキシコなどの市場では、引き続き他の輸出国との厳しい競争にさらされ
るとUSDAは見ている。

 牛肉輸出については、日本向けの早急な回復はないとの見込みにより、前回発表
時から約2%下方修正され、26億ドル(3,484億円)とされた。

 家きん肉製品では、国内生産の増加に加えて、ロシア、中国およびメキシコなど
の輸出先の需要が堅調であることから、26億ドル(3,484億円)と高水準の輸出が
見込まれている。

 一方、レッドミート製品の輸入額については、前年より3億ドル(約402億円)
増の44億ドル(約5,896億円)と予測された。なお、USDAは長期予測において、
2009年には数量ベースでも米国が牛肉の純輸出国に転ずると試算している。

 一方、USDAのペン次官は、USDA主催の農業観測会議において、米国農業
生産者の粗現金販売額の約4分の1が輸出によって生じており、輸出の依存度は米
国経済における平均値より2倍以上上回っていると述べ、農産物輸出の重要性を改
めて強調した。また、同次官は、農産物輸出を取り巻くアジェンダとして、@WT
O新ラウンドの推進、A米州自由貿易地域(FTAA)などの地域自由貿易協定の
検討、Bチリ、シンガポールその他の国との2国間自由貿易協定の推進、CEUと
のホルモン牛肉問題その他の2国間貿易問題の解決、DロシアのWTO加盟問題な
どを挙げた。

 USDAのコリンズ首席エコノミストも同会議で演説を行い、米国の農産物貿易
に関し、今後数カ月において注目すべき項目として、@世界経済の動向、A南米で
の作物生育状況、B米国の次期農業法案の動向、C米国で3月に発表される作付意
向調査結果などを指摘した。さらに、中国について、@その輸出入動向、A3月20
日から施行されるバイオテクノロジーに関する規制の透明性およびBWTO協定の
履行状況(特に国内生産に影響を及ぼす穀物や油糧種子作物の生産者へのインセン
ティブに関するもの)に言及し、同国を特に注視していることをうかがわせた。


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