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フィシュラー委員、亜国からの牛肉輸入枠拡大を示唆


【ブラッセル駐在員 山田 理 3月7日発】EU委員会のフィシュラー委員(農
業・農村開発・漁業担当)は3月4日、バルセロナで行われたアルゼンチンのパウ
ロン農牧水産食糧庁長官との会談の後、同国からのEUの高級牛肉輸入枠の拡大を
提案する意向であることを明らかにした。

 同委員は、「非常事態では、特別な対応が求められる。アルゼンチンは、深刻な
経済・社会危機に直面しており、EUはこれに対する支援を約束している。このよ
うな特別な状況の中で、2002年7月から2003年6月におけるアルゼンチンからの
高級牛肉輸入枠を1万トン拡大するようEU委員会に対し提案する意向である」と
述べた。

 EUでは現在、域外からの牛肉輸入に対して、12.8%(従価税)の関税に加え、
品目ごとに定められた従量関税(例:骨なし冷蔵牛肉303.4ユーロ/100s)が課さ
れている。

 この他、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意の結果、従来から実施されて
きた各種の関税割当制度が、ほぼ同様の形で継続されている。この1つとして、国
ごとに定められた一定基準を満たす高級牛肉に関する関税割当制度(通称ヒルトン
枠)があり、この枠内の輸入にあっては20%の関税のみが賦課される。2001年7月
〜2002年6月までの輸入割当総量は5万8,100トンで、国別の割当量は下表のとお
りである。

        (単位:トン)
国  名 数 量
アルゼンチン 28,000
米国およびカナダ 11,500
豪州 7,000
ウルグアイ 6,300
ブラジル 5,000
ニュージーランド 300
合 計 58,100
 同委員の提案が、EU委員会および理事会で承認された場合、アルゼンチンから
の高級牛肉輸入枠は、1万トン増加され、年間3万8千トンに拡大されることにな
る(アルゼンチンが高級牛肉枠に占める割合は48%から56%に上昇する)。なお、
この他、パラグアイについて、年間1千トンの輸入枠を設けることがすでにEU委
員会から理事会へ提案されている。

 一方、アルゼンチンは、牛肉輸出に関しては別の大きな問題を抱えている。2001
年3月に、同国の農牧畜生産の中心地であるパンパで口蹄疫(FMD)が発生した
ため、各国の輸入規制措置により、EU、北米などの牛肉輸出市場を失う結果とな
った。その後、ワクチン接種などの防疫措置により、FMDの発生は沈静化したが、
牛肉輸出の再開は順調には進んでいない。

 こうした中、EUの常設獣医委員会  (SVC)は1月23日、一部地域を除き、
アルゼンチンで2002年2月1日以降にと畜された牛から得られた牛肉の輸入を再開
することを採択している。フィシュラー委員は、アルゼンチンからの高級牛肉輸入
枠拡大に関する提案を公表した際、「EUは、アルゼンチンでのFMD発生の後、
同国産牛肉の輸入を再開した最初の国となった。また、今、同国経済回復を支援す
るため、貿易拡大策を実施する最初の国でもある。他の諸国も EUのこの動きに
同調してくれるものと期待している」と述べている。


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