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米会計検査院、国内のBSE対策の評価レポートを公表


【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 3月7日発】米会計検査院(GAO)は2月
26日、米国内で講じられている牛海綿状脳症(BSE)対策についての評価報告書
を公表した。本報告書は、上院農業委員会のハーキン委員長(民主党)、ルーガー
上院議員(前委員長:共和党)およびダービン上院議員(民主党)の3名の要請に
応じたものである。

 今回の報告書でGAOは、現行の連邦政府の対策は、BSE感染牛・製品の締め
出しや、BSEが発見された場合の飼料を経由した他の牛への伝達防止、食品への
混入防止などを確保するには十分ではないと指摘している。その根拠としては、輸
入時検査の不備や、農場での死亡牛のサーベイランス対象数が少ないこと、米保険
社会福祉省(HHS)・食品医薬品局(FDA)による飼料規制(反すう動物への
ほ乳動物由来たん白質の給与禁止)の遵守確保が徹底されていないこと、中枢神経
系組織の含まれる可能性のある製品を消費者が特定できるようになっていないこと
などが挙げられている。

 また、他国が講じている対策との比較について、輸入規制やサーベイランス頭数
の拡大などは他国よりも早い段階から実施しているが、飼料規制に関しては、牛由
来の飼料を馬や豚に給与することを認めており、他国に比べ寛大な措置であるとも
指摘している。

 その上でGAOは、関係省庁に対して以下のような勧告を行っている。

(1) 輸入産品の検査強化のため、HHSと米農務省(USDA)は税関と協議の上、
 適切な人員配置など調整の取れた戦略を策定すること

(2) 飼料規制の監督と遵守の強化を図るため、HHSはFDAに対して、@必要な
 情報の入手、規制対象企業の特定化などのための州政府と連携した戦略の策定、
 A違反企業に対してとるべき行動基準や、企業が適切な改善措置を講じているか
 どうかを確認するための再検査手続を含む遵守確保戦略を策定するよう指示する
 こと。

(3) USDAは、特定の牛肉製品について、行政サイドからの発表や警告表示など
 によって、中枢神経系組織が含まれている可能性がある旨を消費者に対して知ら
 せることが適当かどうかの検討などを行うこと(HHSも、他の食品、化粧品、
 医薬品について同様の検討を行うこと)

(4) USDAは、サーベイランス強化のため、農場での死亡牛の検査頭数を増やす
 こと。

 報告書の中には、HHS(FDA)とUSDAからの反論を含むコメント(さら
に、これに対するGAOの見解)も掲載されている。USDAからはベネマン農務
長官が、GAO報告書の公表と合わせて、本報告書は、@米国でのBSE発生の危
険性は極めて低いとするハーバード大学の危険性評価報告書の結論や勧告を適切に
認識していない、A我々からの広範囲にわたる指摘にもかかわらず、科学的、技術
的な誤りが訂正されていない、B対策強化のためこれまで各省庁によって講じられ
てきた追加的な措置が、その勧告内容には適切に考慮されていない、という批判的
な見解を明らかにした。また、関係業界からもアメリカ食肉協会(AMI)やアメ
リカ飼料産業協会(AFIA)が、GAO報告書には誤りや見落としがあるとの声
明を出した。

 一方、前述のタービン上院議員は、今回の報告書を受けて、@輸入食肉製品につ
いての種類や原産地に関するより詳細な情報提供の義務付け、A病畜の肉や中枢神
経組織などの使用に対する新たな規制などを含む法案を近々提出する意向を明らか
にしている。


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