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酪農生産者に団体交渉権を認可(豪州)


【シドニー駐在員 粂川 俊一 3月14日発】豪州消費者自由競争委員会(ACC
C)は3月13日、酪農生産者に乳業メーカーとの団体交渉権を正式に認可すること
を決定した。これは、豪州では、商業法(Trade Practices Act)により販売側の
団体交渉権が一部例外を除いて厳しく制限されているため、その取扱いが注目され
ていた中、昨年10月3日にACCCが発表した草案に検討を加え、最終決定が行わ
れたものである。当初草案どおり2005年7月1日までの期限付きながら、酪農生産
者はメーカーとの生乳供給契約の際、価格などの条件について団体で交渉すること
ができることとなる。

 今回の決定についてACCCのフェルス委員長は、当初の草案では団体を形成す
るに当たって地域が限定されることに対する酪農生産者の懸念を考慮したものとな
っている。草案では、12の特定の地域をベースに酪農生産者に対して団体交渉権を
認めるものであったが、この最終決定では、「利益を共有する団体」(shared com
munity interest)として地域の制限なく交渉団体の形成を認めている。

 交渉単位として、@農場経営や気候条件が類似する生産者であること、A生乳供
給の際に、乳業メーカーの工場に経済的に輸送される距離内で営農していること、
B特別な原料乳を供給していること、以上のうちいずれかの基準を満たす酪農生産
者同士は、地域にかかわらず交渉団体を形成することが可能となった。交渉単位の
形成は、当初の草案に比べ相当に柔軟なものとなっている。

 また同委員長は、酪農生産者に交渉の技能と経験を積ませる機会を与えることに
よって、酪農経営が酪農乳業制度改革後の市場環境に順応して行く支援になるとし
ている。また、これにより、効率的な酪農生産者が生き残ることになるため、酪農
生産収入のウェイトが高い多くの地域社会の経済にも貢献するものとしている。

 なお、ACCCでは、酪農生産者とメーカー双方による交渉が自発的であればあ
るほど、消費者価格への悪影響は少なくなるとしている。乳業メーカーは代替可能
な供給源を持ち続けるとともに、生乳処理段階、小売段階両方において競争的状況
に直面し続けるとも見込んでいる。

 今回の決定に対して、当初の草案に対して評価しつつも批判的な意見を唱えてい
た豪州酪農生産者連盟(ADFF)のローリー会長は、結果に満足しており、すべ
ての州の酪農生産者が団体を形成し始めることを期待するとしている。

 連邦政府のトラス農相も、この決定に対して歓迎の意を表明するとともに、酪農
生産者と乳業メーカーとの間の力のアンバランスを是正する手段として、酪農生産
者にも歓迎されることを確信するとしている。

 当初の草案発表から最終決定まで半年近い時間を要したが、メーカーとの交渉に
際して、酪農生産者は十分な交渉力を持つことが予想され、生産者にとって酪農乳
業制度改革後の最も良いニュースという声も上がっている。


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