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2001年の畜産事情を総括(カンボジア)


【シンガポール駐在員 小林 誠 3月13日発】2月20・21日の2日間にわたって、
カンボジアの首都プノンペンで農林水産省家畜生産・衛生局の年次会議が開催され、
国内24県の省家畜生産・衛生事務所長による2001年の生産・衛生状況が報告され、
今年の活動に関する検討も行われた。同会議には、農林水産省幹部の他、国連食料
農業機関(FAO)、非政府組織(NGO)関係者をはじめ、畜産関係民間企業の
代表者も出席した。

 会議では、同局の年間予算、家畜頭羽数、家畜衛生、国際協力プロジェクトなど
についての報告が行われ、2002年度(4〜3月)の予算額が説明された。

 報告によると、2001年のカンボジアの家畜飼養頭数は、牛が286万9千頭(うち
役用131万頭、繁殖用雌69万1千頭)で前年より5万5千頭の増加(+2.0%)、水
牛が62万6千頭(うち役用35万7千頭、繁殖用雌21万1千頭)で前年から5万頭減
少(▲7.4%)した。また、同国の食肉資源として重要な位置を占める豚について
は、211万8千頭(うち繁殖用雌22万1千頭)で前年より3万2千頭の増加(+1.6
%)、豚に次いで重要な動物性たんぱく源である鶏は、1,525万1千羽で前年より
23万1千羽増加(+1.5%)した。家畜飼養頭羽数の調査は、毎年、地方事務所の
職員が農家に出向いて実数をカウントする方法が採られている。同国では、農業の
機械化が進んでおらず、農業における役用家畜の重要性が高い。したがって、役用
家畜頭数が減少した場合には社会不安につながるため、政府は役用家畜の頭数維持
に神経をとがらせており、通常、役用家畜頭数が減少しても、公表数値には直接反
映しないとされている。このような事情にもかかわらず、今回、水牛頭数が7%強
減少したことを報告しながら、局は畜産が順調に成長していると評価しており、同
国畜産において水牛の重要性が低下していることが推察される。

 同国では、口蹄疫などの各種疾病が常時発生しているが予算不足からワクチンの
接種や治療が十分に行えていない。国内で病勢鑑定が行える疾病のうち、口蹄疫の
発生は5県の合わせて16地区で報告されており、感染家畜は牛333頭、水牛41頭、豚
63頭で、このうち牛10頭がへい死した。パスツレラ菌感染症は4県の合わせて11地
区で発生が報告されており、牛71頭、水牛81頭、豚59頭が感染し、このうち牛25頭、
水牛54頭、豚6頭がへい死した。

 同局の2002年度予算は21億2,945万レアル(約6,814万円:100レアル=3.2円)と
前年度比1%増となっているが、事業予算はほとんど計上されておらず、これにつ
いてはほぼ100%を海外援助に依存している。現在進行中のプロジェクトには、豪
州クインズランド大学の協力による牛・水牛の肝蛭防除計画と4県を対象とした世
界銀行と国際農業開発基金(IFAD)の協力による農業生産性改善計画がある。
また、FAOなどの国際機関やOxfarmなど多数のNGOが協力して、獣医師不足を
補うために行っている家畜衛生補助員養成計画は14県で行われている。同計画では、
各村から選抜された農民に対し、家畜飼養・衛生に関する研修を行うのに加え、動
物医薬品や種鶏も供給されている。

 会議は例年どおり、同国の畜産が順調に発展しているというトーンで進められた
が、現実には、種畜や畜産物の海外依存や、衛生状況の未改善、技術普及の遅れな
ど問題は山積している。


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