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【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 3月21日発】3月13日、口蹄疫の疑いのある 牛がカンザス州で見つかったといううわさが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CM E)を直撃し、生体牛の先物市場価格を、今年4月取引の終値(100ポンド当たり) で前日から1.12ドル(約3.3円/kg:1ドル=131円)下げの74.5ドル(約217円/ kg)に急落させるという事態を招いた(注:ストップ安は1.5ドル下げ)。このう わさはさらに全米を駆け巡り、他の取引市場におけるトウモロコシ価格や食肉関連 企業の株価などを軒並み引き下げる結果ともなった。 米国の肉牛業界紙「キャトル・バイヤーズ・ウィークリー」は、事実関係を次の とおり報じている。3月12日にカンザス州ホルトンにある家畜市場で取引される予 定だった9頭の牛の口部に炎症が発見された。同日中に同州家畜衛生省の獣医師に よって、給与された飼料に関連した炎症であり、同様の症状が出荷農家で飼われて いる数頭の馬にも見られたことから、口蹄疫ではありえないと診断されたものの、 確定診断のため、ニューヨーク州のプラム・アイランドにある米農務省(USDA)の 検査施設にサンプルが送付された。USDAによれば、今回の検査も通常のサーベイラ ンス・プログラムの一環として実施されたものであり、2001年には約800頭が検査 され、そのすべてが陰性であったとされている。翌13日朝、こうした事細かな事実 がどこまで認識されていたのかは定かでないが、いずれにせよ、開場したばかりの CMEのトレーダー達の耳に飛び込んできたうわさは、前日まで強含みだった相場に 冷や水を浴びせる結果となった。 同13日夜、USDAが検査は陰性であったとの結果を公表したことによって、こうし た懸念材料も除去されたはずであったが、14日の生体牛価格は、さらに1.3ドル(約 3.8円/kg)下げの73.2ドル(約213円/kg)となり、その後も下げ基調が続いてい るなど、今回の誤報が相場を反転させるきっかけともなっている。また、報道によ れば、生体牛価格が1.5ドル(約4.4円/kg)下がることによる全米の業界の損失は 5千万ドル(約65億5千万円)にも上ると推計されている。 こうした中、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は15日、商品先物取引委員会 (CFTC:米国議会により先物取引規制のために創設された連邦政府機関)に対し、 今回のCMEにおける騒動は市場操作やインサイダー取引などの不当な取引行為の疑 いもあるとして、調査の開始を要請した(CFTCはすでに調査に着手したとの報道も ある)。また、ロバーツ上院議員(共和党・カンザス州)も19日、口蹄疫に関して は、今回のように部分的で不完全な情報であっても、農家に対して深刻な経済的損 失を与えるおそれがあるため、適切な決定や行動がなされるまで情報が漏れないよ う管理されるべきであるとして、ベネマン農務長官に対し、情報の意図的な漏洩が なかったかについての調査要請を行った。 なお、カンザス州家畜衛生長官は、人々の不安を和らげるため、「検査の実施自 体は異常なことではない」といった声明を発表すべきであったとして、こうした誤 報に対処するための適切なプランをあらかじめ整備する意向を明らかにしたとも報 じられている。
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