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鶏肉および鶏卵価格の暴落が深刻化(マレーシア)


【シンガポール 宮本 敏行 5月9日発】マレーシアでは3月初旬以降、供給過
剰による鶏肉および鶏卵価格の暴落が深刻化しており業界に混乱を来している。マ
レーシア家畜生産者連合(FLFAM)は、急増する鶏肉等の輸入がこの問題の元
凶になっているとして国内取引消費者行政省に事態を打開するための対応策を求め
たが、今のところ政府側からの明確な解決策は示されていない。鶏肉および鶏卵は
同国の基幹畜産物であるだけに、業界からは早急な打開策を望む声が高まっている。

 マレーシアにおける99年の鶏肉および鶏卵の1人当たり年間消費量はそれぞれ29
.5kg、17.6kgで、タイ(13.5kg、7.6kg)、インドネシア(1.4kg、2.4kg)、フィ
リピン(7.1kg、2.9kg)といった他の主要なアセアン諸国(いずれも2000年ベース)
を大幅に上回っており、同国では貴重な動物性たんぱく源となっている。FLFA
Mによると、通常、マレーシアにおける週間の鶏肉需要量が730〜750万羽であるの
に対し、現在の生産量は850万羽に達していると言う。その結果、鶏1kg当たりの生
産費2.8リンギ(約95円:1リンギ=3.4円)に対し、農家販売価格は同1.9〜2.1リ
ンギ(約65〜71円)となっており、養鶏農家の赤字は拡大しているとされる。また、
鶏卵についても、1日当たりの需要が隣国シンガポールへの輸出分と併せて1,500
万個である反面、実際の生産量は1,600万個に達している。そうしたことから、鶏
卵1個当たりの生産費16セン(約0.5円:1セン=0.03円)に対し、農家販売価格は
それを下回る同12セン(約0.4円)に止まっている。

 このような供給過剰を引き起こした背景として、FLFAMは、2月中旬の中国
暦旧正月後に需要が一気に冷え込んだことに加え、鶏肉に関しては、中国やタイを
はじめとした海外からの大量の輸入が事態の悪化を招いたとしている。また、輸入
量が急増していることは、農産物の自給率向上をうたう政府方針に相反するものと
して、鶏肉輸入における政府対応の矛盾点を指摘している。

 FLFAMは、全国の生産者に対して、鶏肉や鶏卵の2〜3割に及ぶ生産縮小を
呼び掛けるとともに、国内取引消費者行政省に対しては、鶏肉および鶏卵の消費拡
大キャンペーンの展開および価格上昇を狙った市場介入を行うよう要請した。さら
に、国内産業にこれ以上の打撃をもたらさないためにも、鶏肉輸入を一時的に禁止
する措置を講ずるよう求めている。

 これに対し、同省は、キャンペーンを行うことには同意したものの、グローバル
な自由貿易のルールを侵して特定品目の輸入規制を行うことは不可能であるとして
一切輸入を妨げない方針を明確にしている。同省は逆に、マレーシアの鶏肉鶏卵業
界は余剰生産物を輸出に仕向ける努力を怠っているとして、業界側の無策を非難す
る動きに出ている。さらに、現在の価格暴落を引き起こした原因は生産サイドの無
計画な増産であり、業界には事態を収拾しようとする自助努力も欠けているとして、
両者の意見は平行線を辿っている。

 FLFAMは、現在の鶏肉および鶏卵業界の1月当たりの損失をそれぞれ、7千
万リンギ(約2億4千万円)、1,900万リンギ(約6,500万円)と試算しており、生
産者は次第に疲弊の度合いを増していると言われる。一部の生産者は鶏を処分する
準備を進めているとも伝えられており、同国における畜産の基幹部門を損なわない
ためにも抜本的な解決策が望まれる。


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