ALIC/WEEKLY


豚コレラ防疫に関するEU加盟国の法律が発効


【ブラッセル駐在員 関 将弘 11月7日発】  EUでは、豚コレラの防疫に関
する理事会指令(理事会指令2001/89/EC)が2001年12月に発効した。この指令は、
2002年10月末までにEU加盟国が、これに基づいた国内法等を整備することとし
ていた。

 これらにおいては、豚コレラに感染したすべての豚を淘汰することを基本とす
る撲滅対策は維持されるが、緊急時における加盟国の管理の元でのワクチンの使
用と野生のイノシシへのワクチンの接種を規定している。また、科学技術の進展
にかんがみ、当該指令においては、「マーカーワクチン」の使用も規定している。
マーカーワクチンは、目下開発段階にあるが、このマーカーワクチンの開発によ
りワクチンを接種した家畜と自然感染したものとを区別するものである。

 豚コレラは致死率が高く、伝播しやすいため、人間の病気の原因となるリスク
はないものの、EU域内でその病気が発生した場合、経済的影響が大きく、動物
愛護の観点からも、EUにおいては、その撲滅が最も重要なものの1つとなって
いる。

 今回の指令は近年のEUにおける豚コレラ防疫上の経験を考慮したものである。
つまり、97年および98年の豚コレラが発生時には、非常に大量の家畜を殺処分し、
廃棄せざるを得なくなり、また、EU外との貿易に大きな障害を引き起こした。
このように、豚コレラの発生により、経済的損失が非常に大きなものとなること
が明らかとなったこと、さらに、このような大規模な殺処分が動物愛護の観点か
らも問題を引き起こすことを踏まえたものである。

 今回の指令により、豚の飼養密度が高い地域においては、大規模な殺処分を避
けるため、家畜衛生当局の管理等を条件に、緊急時のワクチンの使用が認められ
ることとなる。

 また、野生のイノシシにおける豚コレラの発生が、EU加盟国や加盟候補国に
おける撲滅の障害となっている地域もある。このため、野生のイノシシへのワク
チン接種も導入されることとなっている。これは、ドイツにおいて既に実施され、
実績のある狂犬病対策としてのキツネへのワクチン接種と似た方法を野生のイノ
シシに応用することとしている。

 また、当該指令は、ケータリング業者などから出る食べ残しなどの食品廃棄物
を豚に給与することを禁止している。また、この規則においては、本年11月1日
以前に、すでに厳格な管理を行うことができる加盟国にあっては、当該月から4
年間を超えない期間に限って、食品廃棄物の飼料利用を認めることになっている。
現在、いくつかの加盟国から出されている要求について、EU委員会では審査を
行っているところである。なお、本年10月に出された「非食用向け畜産副産物に
関する規則」においては、一定の条件の下で、毛皮用家畜への食品廃棄物の使用
を認めることとなる。

 EU委員会のバーン公衆衛生・消費者保護担当委員は、この指令が発効された
ことを歓迎し、「EUにおける家畜の衛生問題は非常に重要なことである。それ
は、健康な家畜が健全な食料を我々に提供してくれるためである。食品の安全と
動物愛護の観点に加え、豚コレラのような家畜の病気の発生は、経済的に甚大な
損失をもたらすものである」などとコメントしている。
 
元のページに戻る